▼ 17
路地裏まで来ると、加治は俺に覆い被さるようにして壁に手をついた。これが多くの女性が憧れる壁ドンというものか。……こんなことされて、何に喜ぶのか甚だ謎である。
「……なんだよ」
少し強がって睨むと、加治は無表情で俺を見下ろした。
「お前、兄貴とかいたんだ」
「いるけど……それが何」
「いや? 似てないから、最初誰なのかと思っただけ」
似てないって。……分かってるよそんなの。むっとしたとが伝わったのか、加治も不機嫌そうに俺を見下ろした。
「あっちゃん、ねえ」
ぞわ、と背筋に悪寒が走る。兄貴に呼ばれるのは勿論何も感じないが、加治に呼ばれると気持ちが悪くて仕方ない。
「可愛い呼ばれ方してんな、魔王が」
「べ、別にいいだろ……っ!」
俺だって好きで呼ばれているわけじゃない。ぎろりと睨むが、加治は表情を変えることなく俺を見つめる。
「あっちゃんて俺も呼んでいい?」
いいわけないだろ。何を言ってるんだこいつ。
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