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 俺が頭にクエスチョンマークを浮かべたのが分かったのか、加治は続けた。

「さっきまで友達といたんだけどね」
「あ、そうなんだ…」

 彼女ではなかったのか。休日に二人ででかけているくらいだから、親しい間柄だと思ったのだが、この反応を見る限りそこまで親しくないかもしれない。

「えっと、じゃあこれで」
「あっちゃん、もういいの?」
「うん」

 すぐに頷くと、加治はぴくりと眉を動かした。笑顔が少しだけ引き攣っている。

「すみません、ちょっと話したいことがあるので篤くんお借りしても良いですか?」

 突然名前を呼ばれ、どきりと心臓が跳ねる。兄貴は何の疑いもなく了承すると、加治はじゃあこっちと俺を促した。

「ここで待ってるからね」

 兄貴はいってらっしゃい、と手を振ってきた。…行く以外に選択肢はなさそうである。俺は仕方なく、加治についていった。


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