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「何故遊園地…」
「偶にはいいだろ」

 国分寺先輩に連れられて着いたのは極普通の遊園地だった。国分寺先輩がこんな庶民的な所へ来るのかと意外に思った。隣でハルがまさか…と何やら呟いている。どうしたハル。

「何に乗ります?」
「勿論最初は絶叫系だろ」
「ですよね! …ん? は、ハル? 真っ青だけど大丈夫か!?」
 大人な雰囲気を漂わせている国分寺先輩の年相応の一面に驚いた。先程から静かなハルに不思議に思って見てみるとぎょっとするほど真っ青だった。

「い、いや…」
「オイ、下僕なんてほっといて行くぞ」
「え、でも。ハル、休んどくか?」
「…っクソ! 俺も行くに決まってんだろ!」

 急に怒り出して一人で先に行ってしまうハルに慌てて着いていった。








「は、ハル…大丈夫か」
「ああ…」

 発車します、とアナウンスが聞こえたときのハルの顔色と汗の量は尋常じゃなかった。そして、大丈夫だ、と自分に暗示をかけるように呟いていたハルを見ていた俺まで不安になってしまう。
 頂点に到達して、体が前に傾いたとき。

「ぎゃあああああああああああああああああ!」

 ハルは叫んだのだった。

「苦手なら言ってくれればよかったのに」
「かっこわりぃだろ、そんなの…」
「フン、ざまあねぇな」

 真っ青な顔で俯いているハルを哀れに思った。ハル、国分寺先輩にいいようにからかわれてるんだな……。

「……次は観覧車行くぞ」
「え? 別にいいけど、まだ休んでた方が」
「いや、観覧車だ」
「て、テメェっ…」

 形勢逆転とはこのこと、というように笑ったハルに対して、今度は国分寺先輩が青くなった。っていうかハルどんだけ観覧車に乗りたいんだ…。男だけで乗ったって面白くないと思うけど。

「はっ、嫌なら国分寺さんは来なくてもいいぜ? その代わり俺は、し、シロと二人っきりで乗れるけどな!」

 だから名前いい加減慣れろって。

「テメェ、…後で殺す」








 思い返せば不自然だったんだ。どうしてあの国分寺先輩が青くなったのか。そして、観覧車が上に上がるほど何も言葉を発さず、目を瞑っていたのか。横で勝ち誇った顔で国分寺先輩を見ていたのか。それは降りた後に真っ青になり、フラフラしていることで分かった。

「国分寺先輩、観覧車苦手だったんですね…」
「ンなわけねーだろ! これは偶々だ!」

 説得力ないですよ、そんな青い顔して意地張っても。

「よく言うぜ。高所恐怖症の癖に」
「あ゛ぁ!?」
 
 怖っ!
 ……それにしても二人の意外な弱点を知ってしまった。特に国分寺先輩なんて意外すぎる。やっぱ人の子なんだな…。ちょっと親近感湧きます…。
 っていうか!

「折角遊園地来たんですから、皆で楽しめるものにしましょうよ!」

 ちょっと面白かったけど、やっぱ楽しめるのがいいよな。と思い、笑顔を浮かべれば二人は頬を染めて顔を逸らした。ちょっと、人が珍しく笑顔を浮かべたのにその反応って傷つくんですけど。

「…フン、仕方ねえな」
「そうだな…べっ、別にお前のためじゃねえからな!」

 それぞれの反応に、じゃあ気を取り直して行きますか、と歩き出した。
 その後思い切り遊んで、余韻をを残したまま家に帰った。が、何かを忘れているような……。

「――あれ、二人からのアタックは?」








(もう占いなんて信じないと誓った夜でした)






→後書き

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