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中高一貫で閉鎖的な流麗学園ではそっち方面に走ってしまう輩も多いと聞く。そっち方面というのは男同士の恋愛なんだが。別にそれに嫌悪しているわけじゃないし、自分には関係の無いことなので割とどうでもよかったりする。
 さて、次に何故俺が東へ移らなければならないか、という話になるが、結論から言うと原因は勘違いだ。
 担任――いや、"元"担任から聞かされた話では、俺と同姓同名の人物がいるらしい。名前を田中悠木(因みに俺は田中結城だ)といい、クラスは北だったという。その生徒が何らかの問題を起こし、慌てて東に移動ということになった。
 翌日無事に移動されたが、その日風邪で休養していた先生が翌日、名前欄を見て思った。「なんだ、まだ移動してないのか」放っておいたら被害が及ぶかもしれないと思い込んでしまった教師は誰にも確認することなくそいつを移動させた。その不幸な生徒――それが俺だ。
 理事長はよく外出する人で、移動のことも教師にまかせきりな感じだ(自由人だな理事長)。誤って俺を移動させた日、理事長は外出していたので知らないらしい。
 同姓同名なのだし(漢字は違うが)、間違うのは仕方ないと思うが事が事だ。これはバレたら確実に怒られる。そして教師たちは考えた。このままにしておこう、と。俺的にはおいいいいいって感じなのだが、そういう方向で決まったらしく(主に教頭と校長が決めたらしい)俺は戻されること無く移動ということになったのだ。

「一体どんな問題起こしたんだよ…」

 分かっていてもやはり田中悠木のせいだ、と感じてしまうのは仕方ないことだと思う。何故俺なんだ。何故そいつと同じ名前なんだとぐるぐるとどうしようもないことを考えてしまう。 まだ他の区の方が気が楽だった。

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