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 ななななな何!? 俺何かやらかした!?
 何故だか湯気が出そうな程真っ赤になって固まっているハルに、俺は戸惑う。こうなったのは、余程のことがあったに違いない。どどどうしよう!

「ななななんて格好してやがんだ! テメェ!」

 ……ん?
 俺はハルの言葉にぽかんと口を開けた。今物凄い間抜け面になっていることだろう。それはもう目も当てられないような…いや、今俺の平凡な顔について述べている場合ではない。

「え、えっと…?」
「はっ、早く服着ろ!」

 そう言うものの、ハルの視線は俺の貧相な上半身に固定されている。女ならまだしも男の裸でそんなに照れるか? もしかして物凄い赤面症なのか? ……っは、そうか! 夏だからといって風邪引かないとも限らないから早く服着ろってことか! なるほど…何ていい奴だ…!
 自己完結し、一人感動してハルを見つめた。俺の視線に気づいたハルは赤い顔のまま俺を見る。俺は分かったという意味を込めてグッと親指を立てると、一つ頷く。

「…は?」

 ハルの目が点になった。俺は少し不思議に思ったが、そのまま寝巻き――ジャージの下も脱ぐ。

「どあああああアっ!?」
「へあ!?」

 こっ、今度は何ですか!?
 再び響いた低い叫び声に間抜けな声を上げ、ドキドキしながらハルを見る。

「だっだだだ、だからっ…!」
「はっ、はい!」

 思わず敬語になってしまうほど、顔が恐ろしくなっている。しかし、顔は茹蛸みたいだからイマイチ迫力がないよね。いや顔は怖いけど。

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