3 机に置いている携帯を手に取り、履歴から電話をかけて耳に当てる。無機質な機械音は数回のコールの後、音が止んで通話が繋がった。 「あ……」 『……よぉ』 「!?」 通話口を通してでも分かる低くて色気のある声。谷屋先輩ではない。これは――国分寺先輩だ! 予想外のことに、俺の心臓はバクバクと音を立てて騒ぎ出す。ななななんで先輩が!? 「こ、国分寺先輩…」 『…あー、やっぱりお前か』 「え…」 やっぱり? 一体どういうことだ。いや、ていうか谷屋先輩は? そこで、ある一つの可能性が頭に浮かび上がる。…俺、間違って国分寺先輩の携帯にかけたのか!? 携帯を耳から離す。…しかし、表記されている文字は、やはり谷屋先輩だった。…って、当たり前か。そもそも国分寺先輩の電話番号知らないからな。馬鹿か俺は。 『おい、聞いてんのか?』 「えっ!? す、すみません、聞いてませんでした…」 『だろうな』 くすりと笑ったのが伝わる。色っぽい息が俺の鼓膜を震わせた。……心臓に悪いんだが。ていうか、だろうなって何だよ。 「え、えーと、……谷屋先輩は…」 『あん? 何だよ、俺じゃ不満ってか』 めっ、滅相もございません! ていうか怖いです! そんなドス利いた声で話さないでええええ。谷屋先輩助けてええ! そんな俺の願いが通じたのか、向こうでガタガタと音がする。そしてここまで伝わってくる大きい声。 『おい虎! 人が出かけてる時に勝手に入るなって何度も――あっ! こらっ、何で携帯持ってんだよ!』 『別にいいじゃねぇかよ。しっかし、くっ…ははははは! ジョンって!』 うっ、うわあああああああ! やっぱりってそういうことかああああ! 俺の顔は急激に体温を上げた。携帯からはまだ言い争いが聞こえるが、俺はそれどころじゃなかった。恥ずかしいいいい! |