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 机に置いている携帯を手に取り、履歴から電話をかけて耳に当てる。無機質な機械音は数回のコールの後、音が止んで通話が繋がった。

「あ……」
『……よぉ』
「!?」

 通話口を通してでも分かる低くて色気のある声。谷屋先輩ではない。これは――国分寺先輩だ!
 予想外のことに、俺の心臓はバクバクと音を立てて騒ぎ出す。ななななんで先輩が!?

「こ、国分寺先輩…」
『…あー、やっぱりお前か』
「え…」

 やっぱり? 一体どういうことだ。いや、ていうか谷屋先輩は? 
 そこで、ある一つの可能性が頭に浮かび上がる。…俺、間違って国分寺先輩の携帯にかけたのか!? 携帯を耳から離す。…しかし、表記されている文字は、やはり谷屋先輩だった。…って、当たり前か。そもそも国分寺先輩の電話番号知らないからな。馬鹿か俺は。

『おい、聞いてんのか?』
「えっ!? す、すみません、聞いてませんでした…」
『だろうな』

 くすりと笑ったのが伝わる。色っぽい息が俺の鼓膜を震わせた。……心臓に悪いんだが。ていうか、だろうなって何だよ。

「え、えーと、……谷屋先輩は…」
『あん? 何だよ、俺じゃ不満ってか』

 めっ、滅相もございません! ていうか怖いです! そんなドス利いた声で話さないでええええ。谷屋先輩助けてええ!
 そんな俺の願いが通じたのか、向こうでガタガタと音がする。そしてここまで伝わってくる大きい声。

『おい虎! 人が出かけてる時に勝手に入るなって何度も――あっ! こらっ、何で携帯持ってんだよ!』
『別にいいじゃねぇかよ。しっかし、くっ…ははははは! ジョンって!』

 うっ、うわあああああああ! やっぱりってそういうことかああああ!
 俺の顔は急激に体温を上げた。携帯からはまだ言い争いが聞こえるが、俺はそれどころじゃなかった。恥ずかしいいいい!

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