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 リビングに行くと、ハルはもう起きていた。い、意外に早起きなんだな…。
 眉を顰めてテレビ(ニュース)を眺める不良の姿は些か奇妙な光景だ。俺は少し緊張しながら傍まで近づく。気配に気づいたのか、ハルが振り返った。俺は更に増すドキドキを抑えながら口を開く。

「お、おはよう」
「……おぅ、はよ」
「あ、あのさ、谷屋先輩から昼に体育館に来て欲しいって連絡があったんだけど…えっと、今日、大丈夫か?」
「まあ、予定はねぇけど」
「そ、っか。分かった」

 頷いて発せられた言葉に俺はそう告げて、部屋に戻ろうと踵を返した。あー、行きたくねぇなー…。まあ、ハルがいるし、まだ安心できそうだ。それに、谷屋先輩や唐島先輩も、いざとなったら守ってくれそうな……気はする。内面をそんなに知ったわけじゃないから、何ともいえない。人はいくらでも偽れるから。その点、まだ添畑はストレートと言うか、素っていうのが分かるけど。でも添畑はあからさまに俺を敵視しているから助けは求められそうにない。


「あ、お、おい、待て!」
「へあっ!?」

 考え事をしていたからか、少しばかり大きいハルの声に、俺は驚いて情けない声を上げる。へあってなんだ、へあって。
 振り返ると、すぐ後ろにハルがいた。俺の心臓は跳ね上がる。

「わ、わりぃ」
「あ、いや、え、えーと。何?」
「し…し、しししし…。くそっ」

 ……し?
 ハルは顔を赤くして「し」を繰り返している。そして、苛立ったように舌打ちをして、ガシガシと髪を掻き混ぜた。

「お前は、行くのか」
「え、あぁ、うん、行くけど」
「そうか……」

 ハルは数回頷いて、俺を見る。顔が真剣みを帯びていて、俺の頭には疑問符が浮かんだ。……ん? ていうか、それだけ? 「し」は一体何だったんだ?

「引き止めて悪かったな」
「いや……じゃあ、また後で」
「ああ」

 どうやら、本当にこれだけだったらしい。今度こそ俺は部屋へと向かった。

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