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 痛いだろうなぁ。とどこか他人事のように考えた。うんうん、だって煌々しい銀のリングで装飾された手で殴られるんだもんな――…ってええええっ! ちょ、あれ絶対痛いって! 骨折れるって!
 自称ポーカーフェイスの俺でも、流石に今は真っ青になって無様な顔になっているだろう(元々そんなにいい顔でもないけど)。その位動揺は激しかった。ちらりと様子を窺うと、男は手を振り上げたところだった。反射的に目をぎゅっと瞑る。

「てめぇっ……―――巫女ちゃんシリーズ、知ってんのか!?」

 ずるっ。予想外の言葉に俺は思わずギャグ漫画のようにずっこけた。
 な、何だって……? 目を白黒させながら慌てて体制を元に戻すと、がしりと肩を掴まれた。気がつくと目の前には端正な顔が凄く近くにあって、色んな意味で(八割方は恐怖だ)心臓が高鳴った。興奮気に、しかも輝いたとした表情で見てくるのは何故なんだ。怖いんですが!
 ところで、問題はそこではない。最も気にするべきところは男の発した言葉である。それは先程、可能性は無いに等しいと捨てた考えのものだった。――つまり、この服装は自分の意思で着ているものであって…、言い換えれば、この不良は巫女ちゃんシリーズの…。えええええええ! 超似合わねええええ!

「どうなんだよ! 何とかいえやオラァッ」

 俺が黙っているのが耐えられなくなったのか、肩を凄い力で揺す振られて応えを催促してきた。ギャーッス! ゆゆゆ揺らさないで気持ち悪いいいい!
 先程と違う意味で真っ青になると、はっと何かに気がついた男は、手をぴたりと止めた。次いで、俺の体の振動も止まる。ああ、助かった…。昇天しそうだったよ…。

「ん? てめぇ、顔青いぞ」

 首を傾げて不思議そうな顔をする男。あらまあ、そんな顔も美形なのねえ…――って、誰のせいだー!
 当然言える筈もなく、か細い声で取り敢えず、持病です、と答えた。ん? いや、持病って何だよ!? ねえよそんなもん! 自分で自分に突っ込みを入れると、真っ青なまま男を見上げた。おいおい、これ死亡フラグって奴じゃないか…?

「じ、びょう…? ……そうなのか」

 えええええ!
 男は眉を顰めて呟き、そして何故か納得した。良かったー……じゃねえよ! ていうか、え!? 持病が何か分かってないのか!?
「って、んなことどうでもいいんだよ! どうなんだ!?」

 男は凶悪な顔つきに戻ると、再び壁を蹴った。…どっへええええ!? 壁に罅が入ったんですけど! 器物そ…なんとか(思い出せない)、って奴じゃね!? ていうかこの流れ全部この不良の所為だよな!?

「おっ、おおおお俺が知ってるのは、ですね、弟が、その、み、巫女ちゃんシリーズが凄い好きで……!」

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