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「山梨は普段は部屋にいるんだけどな…時々出て来ては暴れ回るんだ。しかも腕っ節の強い奴だから止めるには中央区以外の奴総出で止めなければならない」
「総出じゃなくても国分寺さんは止めることは出来るんだけどな」

 ハルは悔しそうに言う。国分寺先輩って強いイメージはあったけど、そこまでなのか。って、俺そんな人にあんなこと言ったのか!? よ、良かった…嫌われなくて。嫌われたらここにいることできないだろう。ボコボコになった自分の想像をしてぞっとした。いつの間にか鳥肌が立っていて、軽く腕を擦る。
 真面目な顔つきになった谷屋先輩を見て、自然と背筋が伸びた。

「実は今日、山梨が暴れたんだ」
「へ、今日ですか?」

 俺が部屋を片していたときだろうか? そういえば国分寺先輩、ハルを探していたし…。ん? いや、探していたのはまだ別件か? 国分寺先輩はその山梨って奴を止めること出来るわけだし。

「ああ、だから今からお前らをそこに連れて行く」
「え、何でですか?」
「…東での決まりなんだ。誰が決めたのかは知らない。まあ丁度いいから東の連中に自己紹介でもしてくれ。そしてここからが重要だ。いいか、良く聞いてくれよ?」
「は、はい」
「――……何がなんでも喧嘩で勝て」

 谷屋先輩の言葉で俺は石のように固まる。
 えーと…聞き間違いでなければ、何がなんでも喧嘩で勝てとか聞こえたんですが……。聞き間違い…だよな? 聞き間違いであってくれ、お願いします。

「東に移される奴は毎回試されるんだ、必要な奴か否かをな。東で穏便に過ごせるか過ごせないかはこれで全てが決まる」
「え、いやいやいや、何言ってるんですか! 俺自慢じゃないけど喧嘩とかしたことないですよ!?」

 横でほらないだろバーカ! とハルが言っている。いや待てだから何でお前自慢気に言ってんの!? 俺の突っ込みは喉まで出掛けたが、ぐっと堪えた。
 …あっ、そうだ、漫画とかでよくある火事場の馬鹿力宜しく隠された能力がでてくる的な展開になる筈。きっと俺も……ってねーよ!
 あとは一つ一つの行動を予測するとか頭を使いながらやるとかか? それが一番現実的で合理的な方法だ。しかしよく考えてみろ。俺は頭が悪い!
 ……あれ、俺どうすんの?

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