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 何故か顔を赤くしていたが、取り合えず何か怒らせてしまったのではないと安心する。
 暫時して俺は黙々と片付けをし、依然としてハルは俺の手元を見ていたが先程国分寺先輩が来たことを思い出し、俺は少し焦った。国分寺先輩が来てから結構時間経ってるぞ…。これヤバくね?
 あの美麗な顔が恐ろしく歪んだ笑みを浮かべるのを想像して身震いする。急に体を震えさせた俺に訝しそうに見たハルに小さな声で話しかける。

「あの、こ、国分寺先輩が――」
「あぁ゛っ!?」
「ひぃっ」
「あっ、わ、わりぃ…。国分寺さんがどうしたんだ」
「えっと、結構前に部屋に来て……何か、探してたみたいです」
「げっ…!」

 心底嫌そうに眉を顰めたハル。そういえば下僕とか言われてたもんな。あの国分寺先輩の横暴に苦労しているんだなということがよく分かる表情だ。国分寺先輩もハルも会ってそんなに時間経ってないから性格はまだ分からないけど。

「…そういや、お前、何年だ」
「二、年ですけど」
「じゃあ何で敬語なんだよ」
「え」
「タメだから敬語使うんじゃねえ! 分かったか!」
「は、え、…あ、ああ」

 え、いいのか敬語じゃなくて…。呆然として目を瞬かせると目を逸らしてガシガシと掻き回したハル。
 何だか少し顔が赤い。照れてるのか…? 少しほのぼのとした空気が流れる。
 ……あれ? 探されているっていうのに行かなくていいのだろうか?

「手伝ってやるよ!」

 俺が不思議に思っていると得意気に言うったハルは俺の返事を待たずに片付け始めた。手伝ってくれるのは有り難いけど…うん、期待できそうにないよなあ…。あの部屋の散らかりようからするに。だがそんなこと言えずに見守っていると、荷物(という名のガラクタ)を両手一杯に抱え込んだ。
 ああ、そんなに物を持つと……! 落とす、それは確実に落とす!
 予想的中、ハルはバランスを崩して物を全部落としてしまった。余計に散らかってしまった部屋に静寂が訪れた。な、何かフォローしないといけないかな…。

「わりぃ…」

 苦笑してションボリと項垂れているハルの頭を軽く叩く。お、意外に柔らかい。

「えっと、…少しずつ持って行けばいいから」

 子どもをあやす様に言えば途端に顔を赤くし、有り得ないスピードで部屋から出ていった。
 あれ!? 若しかして馬鹿にされたと思って怒ったのか!?
 やべえと思いながら、しかしそれを消すように部屋の片付けを再開した。

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