同室者の反応



「…えっ、と…俺とハルって同姓同名だって言ったでしょう? ハルがここに移される時に誤って俺も移されて…」

 苦笑しながら言うと国分寺虎――…国分寺先輩は驚いた様に目を見開く。あれ、このパターンは知ってるぞ…。デジャヴってやつだな。ついさっきの出来事だが。案の定また笑い始めた。この人の笑いのツボが分からないんだけど。

「とんだ災難だなァ。東は大変だと思うがお前なら大丈夫だろう。俺様が認めた奴だ」

 ……え? 俺認められてたのか。いつの間に、そして何故。ただ平凡な奴が虚勢張ってたみたいな感じだったのに…。
 国分寺先輩は何かあったらこの俺様に言えよ、とニヒルに笑って部屋を出て行った。さり気なく「あんの下僕が……どこほっつき歩いてやがる」と凶悪な顔で言ったのは無視だ。俺は何も聞いてない、…うん。……ハル、ご愁傷様です。
 さて、今度こそ片付けよう。でも、このパンとかその他諸々はどうすればいいんだ? 取り敢えずパンは確実に捨てていいだろう。腐った物だし。
 …………うん、パンとかパンとかパンとかの食べ物類がなくなったら一気にスペースができたわ。どんだけだよ!
 でもスペースができたといってもそれは足の踏み場の問題であって…。まだまだ沢山のゴミなどが産卵している。あー、やる気が失せてきたわー…。

「おい、お前!」
「うおわぁっ!?」
「!? な、何だよ!」

 遠い目をして座っていると、いつの間にか入って来ていたハルに声を掛けられ、驚いて変な声を上げてしまった。マジ吃驚した。何だよはこっちの台詞なんですけど!

「……お前、何してんだ? そこで」
「え、あ、片付け…ですけど」
「片付け…ふーん」

 興味なさそうに呟いてハルがどかりと座り込んだ。あれ、……そこ腐れたパンが沢山置いてあった場所だぞ。臭いとか大丈夫か? 少し離れたところに居る俺でも臭いと思うのに。…ああ、でももともと汚い部屋で生活してたわけだから本人には別段問題ないわけか。
 それにしても、視線が痛い。片付けしている横で何故かハルは俺の手元をじっと見ている。…えーと。やっぱり勝手に片付けちゃまずかったか? でも片付けしてるってことに何も言ってないしなあ。あ、もしかして俺が大事なものを捨てないように見張ってるとか? …ヤバい、怒らせないように慎重にやろう。
 反応を窺う為にチラッと見れば、バチリと重なる視線。すぐさま睨まれ、俺は唾を飲み込む。

「べっ、別に手が綺麗とかそんなこと思ってないからな!」

 ……え?
 予想外の発言に俺は目を瞬いた。

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