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「痛いなあ」
あのイカレ帽子屋め、と思っていると、屋上のドアが開いた。帽子屋が戻って来たのかと思ったチェシャ猫だったが、聞こえてきた声は帽子屋のものではなかった。
「見つけたぞクソ猫!」
帽子屋のことで疲れてしまったチェシャ猫は面倒だな、と心の中で溜息を吐く。会長は面白いおもちゃだが、今は相手をしたくない。チェシャ猫は目を閉じたまま無視をする。
「無視すんじゃ……って」
足音が耳に響く。チェシャ猫の近くで止まった足音、そして途中で切れた言葉。チェシャ猫は仕方なく目を開けた。会長の顔が目の前にあって、少しだけ動揺する。
「…なあに?」
「なに、じゃねえよ。なんだこれ…どうした、誰にやられた」
怒っていたはずではなかったのか。チェシャ猫は自分のことを心配している会長に口角を上げた。
「なに笑って…」
「会長さんには関係ないでしょ? 放っておいてくれない? 口動かすだけでも結構痛いんだよ、これ」
とは言いつつ痛そうに見せないように笑みをつくるチェシャ猫。会長はぐっと眉を寄せると、チェシャ猫の上に跨った。そしてチェシャ猫が抵抗しないうちに唇を合わせる。
「ふっ…んん…!」
抵抗しようにも力では勝てず、されるがままになっている。数秒だったか、それとも数十秒だったか、離れた唇。はあ、と息を吐くチェシャ猫。
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