IF〜ワンダーランドの住人が普通の高校生になったら〜

チェシャ猫総受け/女→男化/3人称視点

※本編とはまったく関係がありません。













 この山奥の学園には、問題児がいる。頭に付けた耳と飄々とした性格から、彼はチェシャ猫と呼ばれていた。顔は整っているため、顔と家柄重視のこの学園ではそこそこ人気はあるが、ほとんどの生徒は関わり合いたくない、と思っている。
 そんなチェシャ猫は今日も問題を起こし、今日も今日とて追いかけられていた。

「テメェ、待ちやがれ!」
「やだよ。待ったら、会長さん僕のこと殴るでしょ?」
「当たり前だろーが!」

 怒りの形相でチェシャ猫を追っているのは、この学園の生徒会長である。この逃げるチェシャ猫と追いかける会長の図はもはや見慣れた光景であり、生徒たちはまたか、と呆れている。そして今日も捕まえられないんだろうな、と思うのだった。案の定、チェシャ猫はあの手この手を使って、今日もまた逃げ切ったのであった。
 日課の悪戯を終え、チェシャ猫が向かったのは屋上だった。チェシャ猫は空が好きなのである。ぐっと近づいたように思える空に背伸びをしていると、背中に衝撃が走った。突然のそれに体はぐらりと揺れ、チェシャ猫はコンクリートに手を付いた。

「よう、クソ猫」
「……やっほー」

 ぐりぐりと背中に靴をめり込ませながら、男は愉快そうに笑った。チェシャ猫は肩を竦めながら男を見上げる。「ちょっと、痛いんだけど。帽子屋」
 男は帽子屋といった。常に帽子を被っていること、そしてチェシャ猫と幼馴染だということ、そして――性格がイカレていることから、そう呼ばれることとなった。ちなみに極道の息子で、それがまたチェシャ猫と関わりたくない要因の一つである。

「ばあか、痛くしてんだよ」



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