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「なんでここが分かったの?」

 ちらりとレンを見る。もしかして、レンが会長さんに教えたとか。視線に気づいたレンが肩を竦める。

「俺じゃないよ」
「…なんだ、お前俺のことは追い返した癖に」

 ぎろりと僕たちを睨むと、深い溜息を吐いた。僕は髪を指に絡めながら、結局帽子屋はどうしたんだろうと考えた。帽子屋の怒りは持続しないし、もう普通のイカれただけの奴に戻ってると思うけど。…それに、体調が芳しくないみたいだし。

「……まあいい。橘のことはとりあえず置いといてだな、お前、さっき煕といただろ」
「会計さん? うん、そうだけど」

 頷くと、一瞬拍子抜けしたような顔をした会長さんは、首の後ろに手を当てて眉を顰めた。

「あいつお前が飛び降りたってテンパってたぞ…。いくらお前が運動神経良いったって、怪我してたらどうすんだよ」
「あ、会長さん心配してくれてるんだ」

 「ありがとね」顔を近づけて目を細めると、じろりと睨み返される。でも僕はちゃんと見たよ。会長さんの頬がちょっと赤かったのをね。

「ところで、りゅーいちくんの姿が見えないんだけど」
「……連れて行ったけどお前いなかったから暴言吐きながらどっか行ったぞあいつ」

 ちゃんと連れてきてくれたんだ。会長さんってば、やっぱり真面目だねえ。

「帽子屋はもう暴れてないでしょ? なら僕はもう必要ないはずだけど」
「俺は――」
「会長は用ないだろうけど、俺はあるからさ、ついてきてよ、チェシャ」
「……橘テメェ」

 にこにこと笑っているレン。そしてそのレンを睨みつけている会長さん。僕はその二人の間からりゅーいちくんの姿を発見し、にやりと笑う。

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