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「でさあ、会長ってば俺にばっか仕事回すんだよ。ひどくね?」
「ふうん、大変だねえ」

 僕は出された紅茶を飲みながら返事をする。胡乱な目が僕に向けられた。

「ちょっと、ちゃんと聞いてる?」
「さあ、どうだと思う」
「お前ってほんとよくわからないやつ」

 はあ、と溜息を吐いてミルク入りコーヒーが入ったカップを傾け、一口飲む。会計さんと遊ぼうと思ったけど、会計さんってば一人で語り出して、今僕は退屈していた。だけど紅茶は美味しいから、これはゆっくり飲んでいきたい。――つまり、紅茶を飲み終わったら僕はさっさと会計さんから逃げようと思う。っていうのも、僕が連れられてきたのは生徒会室で、会長さんが帰ってくる可能性もあるからだ。そこにりゅーいちくんがいるかは知らないし、帽子屋がまだ暴れてるのかもしれないけど、僕には関係ないことだ。
 僕は最後の一口をごくりと飲み干した。その音で、話途中だった会計さんがちらりと僕に視線を遣る。

「美味しかったよ」
「ああ、そりゃどうも」

 「ま、俺が淹れたんだから当たり前だよね」自信満々に言う会計さんが可愛くて、僕はくすりと笑った。さて、飲んだはいいけど、どうやって出ようかな。すんなりと帰してはくれなそうだ。

「ねえ、会計さん」
「…何?」
「窓開けてもいい?」
「ええ? 別にいいけど、書類とか飛ばないかな…」

 会計さんは立ち上がり、窓に近づく。その後を追って、会計さんがそろそろと窓を開けるのを待った。

「開けたけど――っ!?」

 僕は会計さんにすかさず抱きつく。会計さんがびしりと固まったのを確認して、僕は窓枠に足をかけた。首だけ振り返り、唖然とした会計さんににやりと笑って見せる。

「じゃあね」
「え、ちょ、ここ三階――ッ」

 会計さんの叫び声を聞きながら僕は近くの木に飛び乗った。

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