2015.2.22―チェシャ誕―

会長×チェシャ猫









 おおい、という声が聞こえて、僕はそっと目を開いた。その声は聴きなれたもので、僕は、ふわ、と欠伸をしてからもう一度目を閉じた。

「って、おい! 寝るな!」
「んん…煩いなあ、僕、今凄く眠たいから後でもいい?」
「……そうか、じゃあ菓子は誰か別の奴にやるか」

 「なんだって?」僕はピクリと耳を動かして、起き上がる。木の下を見れば、腕を組んで僕を見上げる会長さんの姿。その顔はにやりとしていて、とても不快だ。僕は会長さんをじっと見て、鼻を鳴らす。

「お菓子なんて、どこにもないじゃない」

 匂いだってしない。僕の言葉に会長さんは声を上げて笑う。

「俺の部屋にな、あるんだよ」
「…ほんとかなあ」
「ほんとだって。…まあ、疑うんなら来なくてもいいぜ? さっきも言ったとおり、別の奴にやればいいことだからな」
「行く」

 僕はすたっと地面に降り立った。会長さんは、うわ、と声を上げる。

「お前、危ねえな。当たるところだったぞ」
「当てるつもりだったんだよ」

 にやっと笑うと、会長さんはひくりと口を引き攣らせた。そして僕の頭をべしっと叩いた。痛いなあ。僕は肩を竦めて会長さんの肩に腕を回す。ぴくりと体が反応するのが面白くてにんまりと笑う。会長さんはべたべた触られるのが嫌みたいだから、ちょっとした嫌がらせだ。

「ほら、早く行こうよ」
「ああ…」

 会長さんは深い溜息を吐くと、僕の腕を肩から外し、僕の腕を掴んだまま歩き始める。僕がふらりとどこかへ行ってしまうと思ってるのだろうか。お菓子を貰えるんだから、どこかに行くわけないのに。――まあ、何か面白いことがあったら話は別だけど。僕はぺろりと舌を出して会長さんの背中に向かって笑った。












「オジャマしまーす」

 僕の一言に会長さんが微笑ましい目でこっちを見てくるのが何だか気恥ずかしかったので目を逸らしてしまった。やめてほしいなあそういう目で見て来るの。

「あ、というか別に僕上がらなくてもいいよね。お菓子、ちょうだい」

 手を差し出すと、会長さんがむっと顔を顰めた。

「お前なあ…紅茶淹れてやるから、上がってけよ」
「ああ、そう? じゃあそうするよ」

 僕はにやにやと顔を緩ませながら靴を脱ぐ。会長さんってば、そんなに僕とお茶したいのかあ。そのままにやにやしていた僕だけど――テーブルの上のものを見て、目を瞬いた。

「……かいちょーさん、これは?」
「誕生日ケーキ。お前、今日誕生日なんだろ? …おめでとう」

 ケーキの上には、チョコレートが乗ってて、それにはHAPPY BIRTHDAYと書かれている。

「お祝いなんて……初めてだ」
「そうなのか?」
「うん」
 
 僕はケーキに近づく。美味しそうだ。それに、これには……気持ちが詰まっている。会長さんに顔を向けると、にっこりと笑った。

「ありがとう、ジン。すっごく嬉しいよ」

 そう言った時の会長さんの顔が赤くて、面白かった。















fin.

誕生日おめでとうチェシャ!
相手を誰にしようかな〜と考えた末、会長に。

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