猫の日

猫の日/チェシャ受け/BL薄め
本編とは関係ない話です。








「猫の日?」

 チェシャ猫は、言われた言葉をオウム返しして、首を傾げた。Yはにいっと笑って、大きく頷いた。

「猫はニャーって鳴くだろ。そんで今日は二月二十二日――ニャーニャーニャーってナァ」

 Yがニャーという姿は些か異様だったが、チェシャ猫は納得したようにふうん、と口にする。

「ああ、だから猫の日? …随分短絡的だけど、なるほどね、日本人が好きそうなことだ」

 チェシャ猫は、今いる日本という国の人が何かと何かを関連付けて名称付けたがる人たちという認識で見ている。この前は二月九日だから肉の日だと言われたのを思い出した。

「それで?」
「んん?」
「だからって何? 僕のところへわざわざ来て」

 チェシャ猫は欠伸をする。先程起きたばかりなので、まだ眠たいのである。今日は天気がいいから、日当たりのいい場所で昼寝をしたい。チェシャ猫は今日は授業に出ないつもりだ。

「……ねこ」
「あ、モトヤ。おはよう」
「ん…。なんで……」

 チェシャ猫の同室者であるモトヤがのそりと起きてきて、来客の姿を認めると、不機嫌そうに目を細めた。何でYが朝からここに居るのかと問うている。チェシャ猫は肩を竦めて、さあね、と呟く。

「オイオイ、睨むなっての。ま、そういうわけだから…」

 Yはチェシャ猫の耳に顔を寄せると、何かを囁いた。モトヤが一歩前に出ると、さっとYが離れて行く。チェシャ猫は、Yの言葉を聞いてニヤァ、と笑った。

「じゃあナ」

 そう言ってYは去っていく。モトヤは機嫌の良さそうなチェシャ猫の様子をチラチラと窺う。訊きたいことはあるが、訊いていいものかと悩んでいるのである。

「モトヤ」

 チェシャ猫が横目でモトヤを見る。モトヤは少し緊張して耳を澄ませる。

「今日、何の日か知ってるかニャ?」

 小さく首を傾げて放った言葉に、モトヤが固まった。



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