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「あれあれ」

 部屋に入ったチェシャ猫は、ソファの上で丸まっている大きな体を見て目を細める。彼は同室者の基哉である。不良のような外見であり、喧嘩も強い基哉だが、チェシャ猫に対しては犬のように従順である。

「モトヤ、寝てるの?」

 反応がない。つまらなくなって、チェシャ猫は忍び足で基哉に近づく。寝ている基哉の顔を覗き込んで、にんまりと笑う。つんつんと頬に爪を突き立てる。しかしやはり起きる気配はなかった。興味を失ったチェシャ猫は肩を竦める。そしてその場から去ろうと踵を返した時だった。ぐいっとチェシャ猫の腕を引っ張る者がいた。この部屋にいるのは基哉
チェシャ猫だけ。言わずもがな、腕を引っ張ったのは、基哉である。

「わ」

 チェシャ猫は目を丸くして後ろに倒れる。ぎゅっと後ろから抱き締められ、チェシャ猫は苦笑する。

「モトヤ、起きたの」
「……ん」

 身を捩っても放そうとしない。そうしているうちに、チェシャ猫はだんだん眠くなってきたのか、目を瞬く回数が多くなった。そして、ついには目を閉じ、にやりと笑った。
 願わくば、明日は今日よりも面白いことがありますように。
 チェシャ猫は明日への期待を胸に、静かに眠りに落ちた。













fin.

IF〜もしワンダーランドの住人が普通の高校生になったら〜

→普通とはいいがたい人たちだった。






ということで完結です!
最初に書くのを忘れていたんですが、本編とはまったく関係ありません。
よって、性格が少し本編とは違います。チェシャ猫は人間らしく、ちょっと甘いかな?

楽しんでいただけたら幸いです。

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