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「じゃあ百緒と会計は風紀室」

 隆一は会長を睨みつけるが会長は鼻で笑った。チェシャ猫も依然として笑みを浮かべている。風紀委員長はくっと笑った。

「もちろん、猫もな」
「え」

 チェシャ猫は目を瞬いた。そしてひくりと口を引き攣らせる。

「…僕は問題なんて起こしてないから、風紀室なんて行く意味ないよ」

 「ねえ、会長さん」チェシャ猫は会長に目を向ける。会長は何も考えずに頷いた。
 いや、お前いつも被害受けてるだろ。小さく誰かが呟いた。














 結局、チェシャ猫は風紀委員長に逆らうことができず、風紀室に連れて来られた。道連れにされた隆一と熙とチェシャ猫は赤いソファに座らされ、風紀委員長の鋭い視線を受けていた。その状況はしばらく続き、風紀委員長は突然、あー、と声を漏らした。

「やっぱりお前らはいいや。帰っていいぞ。つーか帰れ」
「はあ!?」

 隆一と熙は目を丸くして風紀委員長を見る。そして、顔を見合わせ、立ち上がる。チェシャ猫は引き攣りそうになる顔を抑えて二人を見上げた。

「え、ちょっと」
「悪いな」
「いやー、帰れって言われたしね、うん」
「だな」

 いや、だな。じゃないよ。チェシャ猫は口を開くが、その前に光の速さで二人が消えた。チェシャ猫はげんなりとしながら、ソファに凭れ掛かる。

「最悪だ…」
「そりゃよかった」

 小さな呟きを拾って笑った風紀委員長の男前な顔に、チェシャ猫は拳をめり込ませたくなった。

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