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「待てよ。そいつ以外に問題児がいるだろ。熙とか百緒とか」

 一瞬保健室が静かになった。名を呼ばれた熙と隆一はそれぞれ顔を引き攣らせる。

「か、かいちょー?」

 だらだらと汗を流して会長を見る熙。悪いなと思いながら、会長は見ないふりをした。熙は仕事仲間に売られたのだった。

「テメェ、ふざけんじゃ…」
「ああ、そうだね。確かりゅーいちくん、この前カラフルな頭をした人たちをボコボコにしてたよ」

 チェシャ猫はにやりと笑みを浮かべながら隆一の起こした問題を告げる。隆一は顔を青くした。熙は、そんな隆一を見ながら、あれもしかして自分は助かる…? と思った。

「ちなみに会計さんは、親衛隊の子たちのイジメを見てにやにやしていたよ」
「ちょ…!?」

 熙は一瞬にして真っ青になった。チェシャ猫が言ったことは事実である。それを見られていたのかということと、それを風紀委員長に告げられたということに慌てる。

「……へえ」

 風紀委員長の目がぎらりと光った。隆一と熙、関係ない他の面々は声にならない悲鳴を出した。一方チェシャ猫はこの状況を楽しみ、にやにやしている。会長も自分の言ったことでチェシャ猫にいい印象を与えられたのではないかと密かに満足していた。保健室は異様な雰囲気だった。

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