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「……ここでは話せない話なの?」
できればあの怖い真由ちゃんとではなくこの猫被った真由ちゃんと話したいんだけど…。俺の言葉に、真由ちゃんは目を光らせる。そして、ふ、と笑った。普通の微笑だったが、俺には悪魔の微笑みに見えた。
「あら…宜しいんですか? ”あの”話をここでしてしまって」
「あ、あの話とは」
嫌な予感がする。俺は恐る恐る訊ねた。
「勿論、優治お兄様のお話ですわ」
「分かった、二人で話そう」
瞳はともかく、愛や高野の前で俺が優治先輩を好きなことを言われては大変だ。俺は慌てて真由ちゃんの肩に手を置いた。小さな声で触んじゃねえよと言われた。ぐさりと胸に突き刺さった。
「その話って長くかかりそうなの?」
「…ええ、まあ」
「じゃあ愛たちは先に――」
「私待ってる」
「瞳…」
頬を膨らませた瞳が真由ちゃんを睨む。睨まれた真由ちゃんはぴくりと眉を動かした。
「だいたい、会長の話とか言うけど、…ヒロくんに会いに来ただけじゃないの?」
「え!? 何言ってんだ瞳!」
んなわけないだろ! 頼むから真由ちゃんを怒らせるようなこと言わないでくれ! 瞳は俺を一瞥しただけで、すぐに真由ちゃんに視線を移す。真由ちゃんは青筋を立てながら、それでもにこりと笑う。恐ろしい…。
「大樹さんに会いに来たとは?」
「ヒロくんのこと好きとか…」
「私が? 彼のことを?」
あああああ…やめてくれ瞳…!
うふふと笑う真由ちゃんに、顔が引き攣る。いつキレてもおかしくない状態だ。
「瞳さんでしたよね? …瞳さんは大樹さんのことが好きなんですね。安心してください。私はそういう風に見ておりませんので」
「そ、そうそう。真由ちゃんには好きな人がいるから。な?」
「ええ」
「……ふうん」
瞳はまだ訝しげな表情だ。少しして、そう、と呟く。それにほっとしていると、瞳は更にこう言った。
「でもやっぱり気になるから一緒に聞きたい」
ひ、瞳……。
俺はがっくりと肩を落とした。
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