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 まさか俺に何か用事があるんじゃ…。俺はふとそう思った。…まさかな。何にしろ、校門を通らなければならないので、その時に声をかけてみよう。

「ヒロくん」
「ん、ああ。帰る帰る」

 くいっと制服を引っ張る瞳は、俺の言葉に小さく頷いた。愛たちを見れば、もう帰る準備を出来ているようだった。俺たちは揃って教室を出る。

「大樹、あの子といつ知り合ったの?」
「先輩の家にお邪魔した時にな」
「へえ、会長の家に。どんな感じだったんだ? やっぱり大きかった?」
「そりゃあもう…」

 豪邸を思い出しながら苦笑すると、高野が楽しそうに笑った。

「何、あんた行ってみたいの?」
「え? いや…まあ、行きたいっていうか、気になるってだけだけど」
「確かに、どういう部屋で過ごしてるのかちょっと気になるなあ」

 愛と高野の会話を聞きながら笑う。先ほどから無言の瞳が気になって様子を窺うと、むすっとしていた。

「どうしたんだ、瞳?」

 どうしたんだって、まあ理由は分かっているけど。瞳は俺をちらりと見て、口を尖らせた。

「…なんでもない」

 どう見てもなんでもないという顔をしていないが、俺は瞳の頭を撫でてそうかと言う。瞳はぎゅっと俺の制服を握った。


















「あら、大樹さん」

 校門までやってくると、真由ちゃんが微笑を湛えて俺たちを迎えた。……やはり俺に用事でしたか。顔を引き攣らせて手を挙げる。

「こ、こんにちは、真由ちゃん」
「ごきげんよう」

 真由ちゃんはにこりと笑った。とても愛らしい笑顔だが、本性を知っている俺としては何だか恐ろしかった。

「ええと…どうしたの?」
「……大樹さんに用事がありますの」

 うふふ、と笑う真由ちゃん。そして瞳や愛、高野、そして最後に俺を見る。

「大樹さんと二人でお話ししたいのですけれど、宜しいでしょうか?」


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