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「ちょっと焼きすぎちゃって失敗しちゃったけど…でも、味は普通だから」
ちょっと!? 焼きすぎ!? 俺は信じられない思いでクッキー(仮)を見つめた。味は普通だと言われてもな…。俺は愛たちを一瞥した。見た目は悪いけど美味しい物を食べた後の表情にはとても思えない。
「ヒロくん?」
「あ、…あーん」
クッキー(仮)が口の中に入っていく。瞳が手を引っ込めたのと同時に口を閉じると、グミのような食感がしてぴしりと固まる。今度は口を開こうとすると、ねちゃあという音が出て上の歯と下の歯にクッキー(仮)がくっついた。味は何とも言えない。甘いようなしょっぱいような辛いような…とにかく、いろんな味が混じって訳が分からなかった。
無心でぐちゃぐちゃと噛んで飲み込む。まだ口の中にあるような嫌な感じだ。
「どうだった?」
「あ、ああ…。旨かったよ」
「良かった。まだあるからね」
「えっ」
俺は顔を引き攣らせた。助けを求めるように愛たちを見れば、さっと逸らされる。あ、あいつら…! いやでも、俺が戻ってくる前に結構食べさせられたのかもしれない…。
にこにこと笑っている瞳に罪悪感を抱きながら、瞳の肩に手を置く。
「瞳…。実は昼飯食いすぎちゃって、もう入らないんだ」
「ええっ」
途端にしょぼんとする瞳。うう、ごめんな…でも俺、これを大量に食べたら昼飯がリバースする気がするんだ…。
「…やっぱり、美味しくなかったよね」
「え!? ち、違う! 旨かったよ、ちゃんと。愛たちも食べたんだろ? 旨かったよな、な?」
「うん、美味しかったから安心しなよ、瞳」
「……でも、ヒロくん一枚しか食べてくれなかった」
「ほ、ほんとにもう腹一杯で…また腹が減ってる時にな」
言ってから、しまったと思った。瞳は俺の言葉にぱあっと顔を輝かせて、愛たちからの視線がびしびしと突き刺さった。
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