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「あ」

 席に近づくと、愛が俺たちに気付いた。その顔は少し青い。俺は不思議に思って声をかけようとしたが、その前に、高野を見て目を丸くした。

「お、おい。どうしたんだ?」

 机にぐでんと伸びている高野に声をかけると、目だけで俺を見て、引き攣った笑みを浮かべた。

「な、なんでもない」
「なんでもないって…昼休み前まで元気だったよな?」

 ちらりと愛を見ると、愛も引き攣った笑みを浮かべている。何かおかしいぞと思いながら口を開いたら、瞳が俺の腕をぐいと引っ張った。

「ヒロくん、クッキー持ってきたよ」
「げ!」
「げ?」

 愛と高野が声を揃えた。視線は瞳の手にあるクッキーが入ってるだろう袋。二人の顔を見て察した。今二人と同じような顔をしているかもしれない。

「あー…えーと、瞳」
「ん? なあに?」

 うっ。にこにこと笑顔を浮かべている瞳に、やっぱり要らないなんて言えない。俺はがっくりと肩を落としながら、なんでもないと言った。二人の同情の視線が身に染みる。

「はい、あーん」

 瞳は袋から出したクッキーを俺に差し出す。……いや、クッキーであるはずの…物だ。

「こ、これは食べ物なのか…?」

 瞳に聞こえないくらい小さな声で言う。

「…瞳。これ、何味だ?」
「え? プレーンだよ」
「そ、そうか…」

 紫芋だったら、色が紫なのも、わかる。だけどプレーンって、それじゃなんでこんな色してるんだ…? しかも、気のせいじゃなかったらなんかウネウネしているような…。生焼けじゃないのかこれ!?


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