瞳の告白

「ヒロくん、ちょっと来て」
「え?」

 瞳は愛をちらりと見ながら、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。愛は肩を竦める。

「分かった、じゃあ先に行ってる」
「えっ、ちょ…」

 何だか嫌な予感がして、慌てて愛を引きとめようとしたがぐい、と強い力で瞳に止められた。

「ちょっとだけだから。ね?」
「……ああ」

 瞳が縋るように見てくるから――俺は、力なく頷いたのだった。














 校舎裏に来ると、瞳は漸く腕を放した。物凄く視線を感じていたので、やっとその視線がなくなったと溜息を吐いた。

「それで、何だ?」

 もうあまり時間を使ってられない。ずっと舌を向いている俺は瞳を促した。

「ヒロくん、好き。私と付き合って」
「――……瞳」
「ヒロくん、今付き合ってる人いないでしょう? 私のこと、もう好きじゃなくてもいい。だから」
「瞳、お前のことは好きだよ」

 じゃあ、と瞳に上目遣いで見られて、ずきりと心が痛む。俺は首を振った。

「……ごめん、無理だ。俺、付き合ってる奴はいないけど…好きな人がいるんだ」

 まだ想いは確定ではないけど、こういった方が瞳も諦めるかもしれない。瞳の可愛らしい顔がぐしゃりと歪む。その顔を見たくなくて、目を逸らした。

「好きな人って……まさか、あの人とか、言わないよね?」
「あの人、って」

 瞳が宙を睨んだ。もしかして――瞳は、俺が優治先輩を気になっていること、気づいているのか…?

「なんで…なんでなの、ヒロくん。だってあの人、おと――」
「…分かってるよ」

 俺は男。先輩も男。それが普通ではないことは分かっている。でも。

「…分かってるけど、好きなんだ」
「ヒロくん…」

 瞳はぼろぼろと涙を零す。俺が泣かせてしまった。ごめん、ともう一度謝ると、瞳はふるふると首を振った。

「迷惑かもしれないけど、…私、諦めないから」

 涙をごしごしと拭って、瞳は俺を見上げた。

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