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「おい! どこ行くんだよ!」

 大樹たちの方へ行こうとすると、京がむっと口をへの字に曲げて俺を見た。…ッチ、うぜーな…。俺はあまりのしつこさに顔を歪めて京を見下ろした。どんな顔をしているかは鏡を見ていないから分からないが、京が青ざめたので中々に怖い顔だったのだろう。

「……これ以上付き纏ってくんなら、マジで殺すぞ、テメェ」

 すっかり大人しくなった京に内心北叟笑む。すると、京が何かをぼそぼそと呟く。何だ? と思って見ていると、今度は耳を塞ぎたくなるような大きな声で叫んだ。

「お、俺はみとめないから!」

 ……はあ? 何でお前に認められなきゃなんねえんだよ…。呆れていると、京が走り出した。漸く去った嵐に深い溜息を吐く。
 よし、じゃあ大樹のところへ行くか。大樹を見ると、視線がバチッと合う。そして女の手を強引に引いてそっちへと足を進めた。驚いている顔の大樹と、その隣の嫌そうな顔をしている女。確か、あいつも大樹の元カノか…。

「ひろ…」

 ああ、癒しだ。と思いながら口を開くと、ぶんっと手を振り払われ、驚いている間に女が大樹に抱き着きやがった。おい、いきなりそれかよ! ふざけんな!

「ヒロくん!」
「瞳…大丈夫だったか?」
「おい…テメェ…」

 キレるのを抑えていると、大樹が俺を見て眉を下げる。

「ヒロくん」

 こいつ、さっきまで強気だったのにいきなり女らしくなりやがって。大樹が女の髪を撫でているのを見てムッと顔を歪める。

「瞳、あんたくっつきすぎ」

 はあ、と溜息を吐く女。同意見だ。早く離れろ。

「おい、助けてやったのに礼はなしかよ」

 不機嫌丸出しで言うと、女はべえっと舌を出した。あ? 殴っていいか、いいよな、これ?

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