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「おい! ゆーじ!」
思わず溜息を吐いた。だからなんで今日に限って…。
女は京を見て、汚いものを見るような目になった。
「ゆーじ、なんでおれに会いに来てくんねーんだよ!」
……は?
「…ああ?」
何言ってるんだ、こいつ。人の心は変わりやすいと言うが、まったくそのとおりだと思う。京に抱いていた想いは端からなかったかのように俺の中に存在しない。むしろあるのは嫌悪感だ。一時期でもこいつのことを好きだと思っていたなんて、と改めて後悔する。そうでなければ大樹に対して暴力を振るうこともなかったかもしれない…いや、あれは京というより俺が悪いんだが。しかし、京のおかげで大樹と話すこともなかったのだと思うと、少し好感が持て――。
「おまえ! なんでおれのゆーじと!」
…ないな。…って、誰がお前の、だよ。俺はお前のものじゃねえしこれから一生なるつもりもない。いつかの体の関係であった女のしつこさが京と重なり、再び溜息を吐く。なんでこうも自分に都合のいいことが言えるんだ。それに暴力的だしな。最初この俺を殴ってきたし……あ? 俺は違和感に眉を顰めた。そういえば、俺は京に嫌われていたはずだろ? だから大樹に色々相談していたんだから。なんで、だ? いつから…? それに、こんなウザイ奴ではなかったはずだ。どうして、と思ったところで京が女を罵っている喧しい声が耳に入る。
そろそろ視線も鬱陶しい。殴ってどっかへ追っ払うかと腕を振り上げた。その時だ。見覚えのある姿が目に入った。最初に女。そして、その隣の――大樹。…やべ。ここで殴ったらまた悪い印象与えちまう。俺は冷静になり、さっと腕を下ろす。…いつから、見ていたんだ? とりあえず、殴る前で良かった。
安堵しながら、顔色の悪い女の腕を掴む。びくりとして怪訝な顔をされたが、気にせず引っ張った。が、こいつ、暴れだしやがった。仕方なく京に聞こえないように話しかける。
「あそこに大樹たちがいる。そこまで連れて行ってやるから大人しくしろ」
途端に大人しくなった。
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