認めない2

(side:優治)



「ヒロくんに近づかないで」

 本格的な暑さになってきた今日この頃。
 久しぶりに徒歩で学校へ行くか。そう思って家を出たところまではいい。もうすぐ学校へ着くという時に進行方向を塞ぐようにして黒髪の女が立ち塞がった。俺は目の前の小さいやつを見下ろしながらどうして今日に限ってと溜息を吐きたくなった。
 それにしてもこいつ、どっかで見たことあると思ったらあれだ。大樹にべったりくっついている女。元カノらしいが、もう別れたんだったらベタベタするなと言いたい。別に羨ましいとかじゃ……ま、まあ、ちょっと羨ましいが…。

「ああ?」

 つか、言ってる意味が分かんねえ。なんでこいつにんなこと言われなきゃなんねえんだ。目を細めて睨むと、一瞬びくりと体が震えた。しかし、負けじと俺を睨み返してくる。

「私、ヒロくんが好き」
「……は?」

 ……言う相手間違ってんぞ、おい。

「なんで俺様に言う?」
「ヒロくんを見るあなたの目が…同じだったから」

 ぎくりとした。俺は動揺を悟られないように平静を装いながら何と、と聞き返す。

「昔、ヒロくんに恋していた人と…」

 ちょっと待て。…それは、誰のことだ? 俺の知らない奴か? それとも…。俺はチッと舌打ちをした。

「…そうだ」
「…え」
「俺はあいつ……大樹のことが好きだっつってんだよ」

 はっと息を呑む音がした。

「ヒロくんは男なのに…」

 ポツリと呟かれたその言葉には、刺があった。…こいつらからしたら、俺は異端者なんだろう。分かっていたことだが…やはり、少し辛いものがある。 

「私、」

 女が何かを言いかけた時だった。――京が現れたのは。

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