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 ゆーじはおれのだ! すきだなんだと喚いている京に、皆ドン引きしていた。優治先輩も顔を顰めている。瞳も京に酷い言葉を言っていて、周りからは京に対する非難が聞こえる。よくもまあ、あそこまで人に迷惑をかけられるな…。

「なにあいつ、ホモなの?」

 愛がぼそりと呟く。その言葉は京に向けられたものだが、俺の心にぐさりと突き刺さる。俺が優治先輩をそういう風に意識しつつあるのは、愛たちから見ると、矢張り気持ち悪いんだろうか…。嫌われたくない、という恐怖が胸を占めた。

「? 大樹どうしたの、顔色悪いよ」

 異変に気付いた愛が心配そうに訊ねてくる。俺はなんでもないと笑ったが、愛はがっしり肩を掴んでもう一度どうしたの、と訊いてきた。

「いや、ええと…」
「もしかして、大樹って…」

 ちらりと優治先輩の方を見る。ぐっと顔を顰めると、俺に視線を戻した。鋭い愛のことだから、感づいたのかもしれない。汗が頬を伝った。

「あのキモい奴になんかされた?」
「――え」
「あいつ、見るからに常識ないし…大樹、あいつになんかされたんだったら私が仕返しに…――あれ? 違った?」
「あ、いや! ええと、そんな感じ…かも」

 誤魔化すように笑うと、愛の目が細くなった。正直に言おう。怖い。美人なせいか、迫力がある。

「じゃあやっぱり私が」

 あそこへ向かおうとする愛を慌てて引き止める。

「やめろ! 俺は大丈夫だから!」

 とりあえずあそこへは行くな! ややこしくなる!

「ええ、だって…」

 不満そうな顔に引き攣った笑みを向けた。渋々行くことを止めた愛は、再び傍観する。瞳を心配そうな顔で見ていて、俺は関係ないのに、何だか申し訳なく思った。……いや、俺は関係あるか。瞳が優治先輩に突っかかったのは、俺が理由だから…。

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