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 え、え、ど、どういうこと。
 何度も視線を外しては向けて確認したが、書いてある文字は俺に現実を突きつける。間違いない、ここが家庭科室だ。あ、あの人一人で何してるんだろう…!? 中にいるのが一人ってことは、まだこのポエムの差出人は来てないんだよな? え、ど、どうしよう!
 ――ゴッ。
 鈍い音と共に伝わる痛み。動揺しすぎて足を壁にぶつけてしまったのだ。痛みに悶絶していると、身近でガラリと何かの開く音。……と思わず現実逃避。俺の目の前のドアが開いて、指定の上靴が見えた。
 あれ、俺終わったんじゃね? 噂で気に入らないことあったら殴るって聞いたぞ。じゃあ何か、何覗いてんだよ不細工って殴られるのか俺。あ、こう見えて超いい人かもしれない。噂が一人歩きしたっってのも有り得ない話じゃないぞ。
 絶望の中に光を見出して、俺は上靴から視線を外して生徒会長を見上げた。

「テメェ、何してやがんだ」
「…ぅぐっ!?」

 噂は本当だったようです……。胸倉を掴まれながら俺は真っ青になったのだった。超怖ぇよ。超怖ぇよ! 大事なことなので二回言ったよ! っていうか漫画とかドラマとかで良く見てたけど胸倉掴まれるの凄い苦しい…!
 俺が黙って苦しさに耐えていると、何も言わない俺に苛々したのか大きな舌打ちが聞こえた。

「おい、聞いてんのか。俺様はなぁ、今忙しいんだよ」

 わーこの人自分で俺様とか言っちゃってるよぷぷぷ。でも似合いすぎて逆に怖い…。
 っていうか、胸倉掴まれたまま喋るとかそんな器用なこと出来ないんですけど。放してくれませんかね出来れば…。
 俺が苦しいことに気付いたのか、生徒会長は勢い良く且つ乱暴に俺から手を放した。こんなに物みたいに扱われたのは初めてです…。もう二度と経験したくないです…。

「げほ…っ、ぁ、…え、えっと…。あ、の」
「あぁ!? トロイんだよ、早く言えカス」

 か、カスうぅぅぅぅ!? 何で初対面の奴にカス呼ばわりされなきゃなんねぇんだ! つか誰だよこいつを生徒会長にした奴! こいつが代表なんて嫌なんですけど!
 しかしそんなことを言う勇気もないカスな俺。

「あ、の、ここに…誰か来ませんでしたか?」
「はあ? 来てねえよ」

 あ、あれ…可笑しいな、ちゃんと家庭科室って書いてあったよな? もう一度確認しようと鞄から紙を出す。下を向いていた俺は生徒会長の表情の変化に気付くことは無かった。

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