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 真由ちゃんが同い年だということを知ったのは、自己紹介を終えて暫く経ってからだった。小さな体と無邪気に笑う顔から、てっきり年下だと思っていた。しかし良く見れば顔立ちは大人びている。

「優治お兄様、以前お話になっていた京さんですけれど」
「……あいつの話はすんな」
「え?」

 真由ちゃんが不思議そうに首を傾げる。…そういえば、京はここへ来たことがあるのだろうか? 俺が呼ばれたくらいだ、来ていてもおかしくない。……ただ、京がここに来たらなんというか…色々大変なことになりそうだ。そこらへんの高価なもの壊したりとか騒いだりとか走り回ったりとか。

「京さんは大切な方だと仰っていましたよね?」
「……ッチ。もう、あいつはちげぇんだよ」
「…そう、ですか」

 ――あれ?
 残念そうな顔をした真由ちゃんが、一瞬笑ったように見えた。首を傾げるが、真由ちゃんは沈んだ顔をしている。気のせい、か。
 優治先輩は真由ちゃんに一瞥もくれずに足を組んで優雅に紅茶を飲んでいる。サマになっているなあ、と見惚れていると、パン! と何か叩く音がした。

「では、今は大樹さんが大切な方ということですね!」

 音の両手を合わせた真由ちゃんがにっこりと笑って言った。今の音は手を叩いた音か、と思っていると優治先輩が紅茶を噴き出した。

「真由、テメェ!」

 顔を赤くした優治先輩が紅茶を置いて立ち上がる。乱暴に置かれたティーカップがガチャンと音を立て、中の紅茶が揺れた。
 …って、いうか。俺が大切な方…って、えっと。顔がじわじわと熱くなって、その熱を振り払うように頭を振った。
 ふふ、と真由ちゃんが楽しそうに笑う。優治先輩はガシガシと髪を掻いてソファに座り直した。否定も肯定もしないってことは、結局どういうことなんだろう。

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