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それがおかしくて笑うと、赤くなった顔を手で隠した。
「な、なんで…」
何でって、そりゃあんだけ愛しいです! みたいな目で見てたら気づくわ。……兄ちゃんは気づいていないっぽいけど。でも兄ちゃんも鈍いわけじゃないし…。男同士ってのが壁かな。
うーんと考えていると、ドタバタと階段を上がってくる音がした。げ、こりゃ兄ちゃんだな。
「いいいい、郁人、お前何して…!」
凄い慌てっぷりだ。俺は振り向いて笑ってみせる。
「どうしたの、兄ちゃん?」
「いや、どうしたの、じゃねーよ!」
「いてー!」
ボカ、と頭を殴られ、俺は痛い痛いと言いながら頭を押さえる。……まあ、全く痛くないんだけどね。
兄ちゃんは桜田さんを見て、目を丸くする。
「え、えっと…どうしたんですか、優治先輩……ま、まさか郁人お前!」
「いやいやいや、そうやって人の所為にするのヨクナイ。オレナニモヤッテナイ」
「何もやってねーのに何で優治先輩顔押さえてんだよ!」
えっと…もしかして、俺が殴ったかと思ってる…? 確かに前は殴ろうと思ってたけど、そんな気もうないのにな。兄ちゃんのこと、大切にしてるみたいだし。
「大樹、何もされてねーから落ち着け」
「え…本当ですか?」
疑わしそうに俺を見る。えー、俺そんなに信用ないの?
「どうして顔が赤く…」
「そ、それは…っなんでもねーよ!」
「え?」
「取り敢えず兄ちゃんは戻ってろって。俺まだちょっと話すことあるから」
「はあ? 俺がいたら問題あるのか?」
問題大有りだし。大した話でもないんだけど、兄ちゃんがいたらマズイしな。
「大樹、俺様もこいつと話してぇことがある」
うんう……んん!? お、俺様!? 今この人俺様って言わなかった!?
「そうなんですか?」
え、兄ちゃんもスルー!? …ハッ、そういえばさっきから一人称を言い直してたような…。え、じゃあもしかして普段俺様って言ってるの? うわー似合うけど…うわー。
「じゃあ、俺戻ってます…」
むっとした表情の兄ちゃんが納得いかなそうな顔のまま階段を下りていった。俺たちはそれを見届けてから、再び向き直る。
「それで、話を戻しますけど、兄ちゃんのこと好きですよね?」
「…それは、どういう意味で言ってんだ?」
「どういう意味って、勿論恋愛的な意味ですけど」
「……や、やっぱりか」
はあああと溜息を吐いて顔を覆った桜田さんは最初見たときの大人びた雰囲気はなく、歳相応のものだった。
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