爆弾現る







 長い昼食の時間が終わった。どうして生徒会長がここで食事をしたのか結局よく分からずのままだったが、帰ってくれるならそれでいい。弁当を片付けながら様子を窺う。ところが動く気配なし。まさかと思いながら恐る恐る訊ねる。

「あ、あの…生徒会長さんはいつまでここに…?」

 向けられる視線。一瞬傷ついたような顔をし、次いで眉を寄せて顰める。

「何だよ、俺様がここにいたら悪いっつーのか」
「そんなことは…」
「そうですけど、やっと気づいたんですか」

 ぎょっとして愛を見る。愛と瞳、二人共どんしてそんなに空気を悪くする…っていうか、生徒会長を怒らせるようなことを言うんだ。俺は生徒会長の暴力的な面を知っているから、はらはらとしてしまう。流石に女子に暴力を振るうってことはないと思う…けど。

「テメェには聞いてねえ」
「大体何でそんなに大樹に構うんですか」
「……っ」

 生徒会長は言葉に詰まる。そうだ、ラブレターのアドバイスを俺からもらっていたなんてことがバレたら嫌だろうからな。そう思って生徒会長の顔を見て目を丸くする。俺だけでなく、きっと教室中が驚愕した。

「…か、関係ねえだろうが!」

 ……ま、真っ赤だ…。ボンッと漫画みたいに一瞬で真っ赤になったぞ…。
 ――え? 今のどこにそんな表情をするところがあった? 思い返しても何も…。俺は更に生徒会長が分からなくなった。

「なにそれ――」

 皆が良く分からないという表情をしている中、愛だけは少し青ざめて生徒会長を見ていた。そしてそんな愛に苦虫を潰したような顔で若干俯いている。

「ぶざけんじゃ…っ」
「あー!? そこにいるのゆーじ!?」
「っ!?」

 な、何だ何だ!? 生徒会長に向かっていた視線が声の主に一瞬で持っていかれる。教室の前方のドアに小柄な少年が立っていた。俺はその少年の容姿に目を奪われる。それは決していい意味ではなくて、完全に悪い方に印象づけられた。
 全く手入れの入っていないボサボサの髪。その髪は顔の半分を覆い隠している。更に眼鏡は凄く厚みがある――まるで、数十年前の眼鏡みたいだ。

「…京」

 生徒会長が小さく呟く。静かな教室にはその声が響いて聞こえた。京と呼ばれた少年は口を大きく開けて笑う。

「ゆーじ、何してんだよこんなとこで! なあなあおれと遊ぼう!」

 それにしても、もう少し声を落とせないものか…。頭がズキズキとし始めた。愛なんか、生徒会長を見る時よりも凶悪な顔をしている。
 …ゆーじというのは、生徒会長の名前だろうか。チラリと横目で見ると、何とも表現しにくい顔をしていた。

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