4






 生徒会長は無言で次のパンを開けている。袋の柄からは中身が分からないけど、また甘かったらどうしようと不安になった。正直言ってもう要らないし、生徒会長の食べる物がなくなってしまう。今度は何が何でも断ろう。
 決心したはいいが、何だか生徒会長がこっちを凝視しているような……? チラリと見ると、何だか急かすような目で俺とジャムパン(食べかけ)を見ている。受け取っただけじゃなくてちゃんと食べろということか、これは…!?
 俺は慌てて受け取ったジャムパンを口にする。ふむ、と咀嚼して思う。甘いっちゃあ甘いけど、眉を顰めるほどではない。これくらいならば容易に食べられる。ごくりと飲み込んでもう一口、というところで生徒会長がニヤリと笑った。い、意味が分からなすぎて怖い…。
 こんなに空気が重たい食事は初めてかもしれない。俺たちの周りだけでなく、教室中も。皆生徒会長の威圧感に慄いている。

「あ、そういえばさ」

 高野が口を開いた。お前、やっぱり凄いわ、この空気でそんな明るい声を出せるなんて…。勇者だ。

「大樹はもうジャスミンのニューシングル、買ったか?」

 カッと目を見開いて高野を見る。そんな俺の反応に不思議そうに首を傾げた。

「な、何だって!? 出たのか!?」
「え、おう…」
「マジかよ…。そういえば数ヶ月前そんな情報出てたな…。すっかり忘れてた」
「珍しいな、大樹がジャスミンの情報忘れるなんて」
「確かに、大樹はジャスミンの情報逸早くゲットするのに」

 がっくりと肩を落とす俺を珍しそうに見る高野達。俺でも自分が信じられない…。でも元凶は何となく分かっている。ここでしれっと食事を共にしている奴の所為だろう…。俺はチラリと生徒会長を見る。会話に入れない生徒会長はどこか不貞腐れて見えた。

「おい、何だ、その…ジャ、なんとかってのは」
「……ジャスミンです。俺の凄く好きなバンドで、凄く人気なんですよ」
「ふーん」

 うわあ、全く興味なさそう。いや、別にいいけどさ。

「明日持ってこようか?」
「…うーん、いや、いい。やっぱり自分で買いたいし」

 ジャスミンのCDはデビューから今発売されているものまでちゃんと揃えている。…まあ、非売品の特典CDは数枚手に入ってないけど…。それは俺がジャスミンを知る前に出たやつだから、勿体無いことをしてしまったと後悔している。

[ prev / next ]

しおりを挟む

4/59
[back]