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「な、何で…!」

 驚きすぎて箸を落としそうになり、慌てて持ち直す。ふ、と軽く笑った生徒会長は優雅にこっちへ歩いてきて、俺は勿論、クラスの皆も生徒会長から目が離せなかった。
 生徒会長は俺と食べかけの弁当を交互に見る。

「ッチ、少し来るのが遅かったか…」
「え?」
「いや、なんでもねえ」
「会長さん、また大樹に用事ですか?」

 愛の顔には笑顔が貼り付いているが、俺には見えるぞ…。早く帰れ、という文字が…。しかも言葉も少し刺々しい。明らかに歓迎していない。瞳も、あからさまに睨んでいる。先程から口数の少ない高野は――、まあ、いつも通り爽やかな笑みで場を見守っているが。
 二人共睨み合って動かない。俺はあまり生徒会長を怒らすなよ…とハラハラしながら見ていた。何かアクション起こしてくれ頼むから…! いや、っていうか生徒会長早く帰ってくれ…! そう願っていると、先に動いたのは生徒会長の方だった。何故か俺の席を通り過ぎると、俺の左隣(因みに前は高野、右は瞳、右斜めは愛という配置だ)に座っている吉田を見下ろし、言った。

「そこ退け」
「へっ……!?」

 言われた吉田は訳が分からないという顔をしている。生徒会長は何故分からないという表情を露わにしているが、安心しろ吉田、分かっていないのはお前だけじゃない…。
 生徒会長は顔色がどんどん悪くなっている吉田を睨み、再び言った。

「退け」
「は、はいぃぃぃいいい!」

 そう凄んで言われたら、そりゃ退くわ……。俺は頭が痛くなった。次は何をするのかと思えば、無言で席に座る生徒会長。
 ……。……?

「いやいやいや、何で座ってるんですか!?」

 あまりに自然過ぎて一瞬そのまま流しそうになったよ!

「はあ? 席が空いてんのに何で座っちゃいけねえんだよ」

 空いてたんじゃなくて空けさせたんだろ。…なんて勿論言えるわけもなく、俺は渇いた笑いを漏らした。すると生徒会長はビニール袋から調理パンを色々出し始めた。へえ…生徒会長って、そういうの食べるんだ。何か意外だ。三食全部高級料理を食べていると思っていた。ん? ここでそれを出しているのは…まさか。嫌な予感がするんですけど。

「えーっと…? もしかして、一緒に食べるんですか?」

 高野が問うと、当然だという表情で頷く。嫌な予感は見事的中してしまった。

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