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 そんなわけで、一つ一つ教室を見回って行こうと思った時だった。俺、一度クラスを訊いたことがあるような気がする。どこだったか…と頭を捻る。京はC組で、手紙を入れ間違えたんだから、可能性があるのはBかDだ。俺が降りた階段からはDの方が近い。俺は少し緊張しながら教室のドアを開けた。

「おい、ヒロキって奴、いるか」
「か、会長!?」
「え、何でここに…」

 ひそひそと俺を見て囁く奴らに睨みをきかせながら、もう一度訊ねた。

「ヒロキって奴はいるかって訊いてんだよ」
「え、えっと…。このクラスにはいませんけど…」

 ッチ。いねえのかよ。一応教室の中を見回すが、下僕の姿は見当たらない。本当にいないようだ。俺は大きく舌打ちをし、踵を返す。視線がビシビシと集中しているが、無視だ無視。
 まあ、これでB組だということが分かった。さっさと会いに行って、このモヤモヤを晴らしたい。

「おい、ヒロキを呼べ」
「へっ?」

 教室のドアは開いていたので、直ぐ近くの席に座っていた奴に声をかける。驚いたように俺を見たが、早くしろという意味を込めて睨むとハッとして立ち上がった。そしてどこかへ向かう。俺はそいつの背中を追って――下僕を見つけた。どこかで見かけたような奴と楽しそうに話している。俺は目が離せなかった。下僕が笑った…その瞬間、ぎゅっと心臓を鷲掴みされる。まただ。またよく分からない感情が俺を占める。
 俺は教室に入った。そのまま真っ直ぐあいつのもとへ行く。下僕を呼びに行っている奴が高浜、と呼んでいる。あいつの名前は高浜大樹、か。口の中で数回唱えると、慌てた様子の高浜大樹に声をかける。

「おい」

 目を丸くして俺を見る数日ぶりの姿。俺はそれが堪らなく嬉しくて、自然と笑みが漏れた。更に驚いたような顔をして俺を見上げている。

「せ、生徒会長…さん」
「よお」

 ニヤリと笑って見せると、どんどん青ざめていく顔。もう怒っていないのか、どちらかというと見つかってヤバイという表情だ。取り敢えず話をする…必要はないが、何でかもっと話していたい。もっと、知りたいと思う。その理由は分からねえけど。

「来い」

 そう言って高浜大樹の手を掴もうとしたが、思いっきり払われた。払った犯人は高浜大樹ではない。ギロリと睨むと、そこそこ顔の良い女が俺を力一杯睨んでいた。

「瞳…」

 ポツリと高浜大樹が呟いた。

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