6




 え、何でいきなり笑え? 意味不明すぎるどうしたらいいんだ俺は。混乱しながらも何とか引き攣った笑顔を浮かべると、ぐしゃりと顔を歪めた。

「チゲェよアホ」

 そして頭を叩かれる。ち、違うって何の話なんだよ。……あれ?
 俺は頭に痛みがないことを不思議に思った。毎回痛いのに、何でだ? 車の中だから?
 生徒会長を見ると、呆れたように溜息を吐いている。イラッとしたぞ今。
 沈黙が続いて、車内はほぼ無音だった。とても居心地が悪い。俯いてじっと手を眺めていると、横から舌打ちが聞こえた。急に聞こえたそれにびくりと肩が震える。

「この前、俺様の書いたやつ見て、お前笑っただろ」
「え、」

 静かに口にしたこの言葉に俺は目を丸くした。 こ、これはもしかして今になって怒っちゃったタイプ? あいつこの前笑いやがったぜクソ! 思い出したら腹立っちまった! みたいな!?

「……あの時、何で……た?」
「え、あ、あの、すみません。聞こえませんでした」
「……ッチ、もういい」

 聞いてなかったことでまた機嫌を損ねるかと思ったが、予想外にも生徒会長は俺から視線を外して黙ってしまった。生徒会長のことを良く知っているわけではないが、こんな生徒会長を見るのは初めてだ。何だか悩んでいるように見える。……まあ、そんなの俺の知ったことではないけど。
 それにしても何が言いたかったんだろう? 俺は一瞬だけそう思って、直ぐに頭からそのことを除き取った。










「おい、起きろ」
「…ん……? ……っわ、す、すみません」

 慌てて飛び起きる。あのまま黙っていたら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。しかも、生徒会長に寄りかかっている。何て命知らずなことを! よ、涎とか垂らしてないよな……? 口に手を遣ってみたが、何もない。多分大丈夫だろう。

「……な、なんもしてねぇからな!」

 は?
 思わずポカンとして生徒会長を見つめた。え? な、何。今度はどうしたんだ?

「ど、どうしたんですか?」
「…〜っ、んでもねぇよ!」

 何でもないという顔をしていないんですけど。
 生徒会長は少し顔を赤くして俺を睨む。意味が分からないが、もうそっとしておこう。余計な怒りは買いたくない。生徒会長から視線を外して俺は息を吐いた。

[ prev / next ]

しおりを挟む

18/30
[back]