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「あ、あの…」

控えめに声を掛けると、ハッと我に返った生徒会長が暫時何かを探るような目で俺を見ると、一つ頷いた。何かに納得したようだ。
 ていうか…そろそろ教室に行きたい。軽く会釈をして横を通ろうとすると、鋭い声が俺を引きとめた。

「おい、ちょっと待て」

 紛うことなき生徒会長の声だ。
 俺はまだ何か用があるのかよとげんなりしながら視線を向けた。

「ついて来い」

 高圧的な口調で告げると、階段を上がりだした。ついて来い……って、え!? ついて行かないと駄目なのか!? もうすぐ始まるんですけど!
 そのまま背中を見送っていると、俺がついて来ていないと気付いたのか、いきなり振り向いて俺を睨んだ。ついて行かないと俺の色々なものが危ない気がする。もしここで下僕発言されたら――。……うん、大人しくついて行こう…。

「ね、ねえ…生徒会長と知り合いなの?」
「え、あ、いや…」

 一応知り合い…? いや、でもお互いに名前知らないよな。それって知り合いに分類されるのか?

「取り敢えず行った方が良くないか? 先生には言っといてやるよ」
「有り難う、高野」

 俺の中で高野の株がどんどん上がる。ああ、その爽やかな笑顔が俺を癒すぜ…!
 愛をチラリと見ると、納得のいかなそうな顔をしていたが、渋々といった様子で呟いた。

「戻ってきたら、問い質すから」
「おう」

 にっと笑みを浮かべて俺は生徒会長の後を追った。










「入れ」

 会話もなく例の場所まで連れてこられた俺の耳に予鈴の音が聞こえる。ああ、完璧遅刻だ。高野は先生にどういう風に言ったんだろうか。
 生徒会長が言う通り建物に入ると、もう見慣れた光景が広がっている。慣れって怖いな…。

「え、っと。どうしたんですか?」
「……単刀直入に言う。今週の日曜日、暇か」
「え? えっと…特に予定はないですけど」
「なら空けとけよ。言っておくが! テメェは荷物持ちだからな!」
「は、はぁ…」

 何でそんなに強調してるんだ。分かってるってそんなこと。
 ……いや待て。その前に何で俺が荷物持ちしないといけないんだよ。金持ちなら執事とかいるもんじゃないのか?
 無意識に嫌そうな顔をしてしまっていたのか、元から穏やかじゃなかった顔付きが更に凶悪になる。

「んだよその顔は。俺様が連れて行ってやるって言ってんだぞ!」

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