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「おら」

 俺は指定された凄く高そうなソファに座り、緊張で小さくなっていると、生徒会長がソファの前にある長方形のテーブルに紙が置かれた。どう考えてもこれは読めってことだよな…。そうか、確か書いてくるって言ってたっけ。
 ちらりと生徒会長の様子を窺い、さっと視線を紙に落とす。
 …は、早くしろって目が語ってた…。怖!
 えーと、何々。『お前のことが好きだ』お、おお、前と違って直球だ。その後色々ストレートな言葉が並べてある手紙は、男の俺が読んでも恥ずかしかった。と、同時に、愛にラブレターを貰った時のことを思い出して笑みを浮かべる。

「……な、に笑ってんだテメェ」
「え、あ…!」

 目を見開いて俺を凝視する生徒会長に、俺はサーッと血が引いていくのを感じた。い、今のって…絶対勘違いしたよな、馬鹿にしたとかって!
 慌てて俺は首を横に振る。

「い、いや、これは決して馬鹿にしたとか…!」
「……あ?」
「…え?」

 訝しげに俺を見た生徒会長に怒りは感じられなかった。俺は目を丸くして首を傾げる。え、ん? 怒ってないなら何で俺を見つめるんだ…?

「テメェは……、ッチ、なんでもねぇ」
「え、は、はぁ…」
「それで、どうなんだよ」
「あ、いいと、思います。前より全然気持ちが伝わってきました」

 生徒会長もちゃんと文章書けたんだな、と失礼なことを考えながら控えめに笑ったら、又もや生徒会長は目を見開いて――。
 急に立ち上がった。

「っ!?」

 え、ど、どうしたんだこの人!? 行動が予想外過ぎて読めねぇよ!
 何か気に食わないことでもしてしまったかと内心大慌てで俯いた。ぎゅっと膝の上で手を握る。汗がじわりと滲んでいる。
 ふと影が俺を覆って、不思議に思い顔を上げると…。
 じいいいいい、と至近距離で俺を睨む生徒会長の整いすぎている顔があった。

「――……!?」

 驚きすぎて体が硬直した。ど、どういうこと!? 何が起きてるんだ、今!?
 て、いうか…マジで綺麗な顔してる…。俺もこれくらいカッコよければ…じゃなくて!

「あああああああ、あの!?」
「あ?」
「な、にして…!」

 不愉快そうに顔を顰めて漸く離れた生徒会長は何か呟いた。それを聞き取ろうとしたが、その言葉は俺に向けられてないものだと感じて視線を再び落とす。
 好きですという文字が脳内に根付いた。

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