資料室

「大樹」

 全ての授業が終わり、まだ騒がしさの残る教室に現れたカリスマ性溢れる人。この学校の生徒会長であり、俺の恋人でもある優治先輩だ。
 クラスメイトの視線が俺に集まる。俺は急いで教科書や筆記用具を鞄に詰め込む。
 愛と瞳にそれぞれアイコンタクトをとって立ち上がる。鞄を肩にかけて優治先輩に近づくと、一瞬だけ顔が柔らかくなる。きゃあ、と小さな黄色い声が上がった。優治先輩の顔に見惚れていた俺ははっとして頭を下げる。

「急がせて悪ぃな」
「いえ」

 首を振ると、優治先輩が歩き出す。ついてこい、ということだよな。俺は一度教室に手を振る。「じゃあなー」「また明日」などと言いながら手を振り返してくるクラスメイト。愛、瞳、高野も笑顔で手を振ってきた。いや、瞳だけは相変わらずちょっと不満そうだった。

「優治先輩、一体どこへ?」
「生徒会室だ」
「え、生徒会室?」

 思ってもみなかった場所を告げられ、俺は目を丸くする。俺も入って良いのだろうか?

「厳密に言えば、生徒会室の奥にある資料室だ。そこで話そうと思ってな」
「はあ…」

 本棚で密集されている部屋が想像される。何でわざわざそんなところでと疑問が出てくるが、何か理由があるのかもしれない。俺は疑問を飲み込み、優治先輩についていった。

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