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 早く話せ、というような目で見られ、俺は苦笑する。

「津村……ええと、津村仁っていう学年は同じだけど一応年上の人がいるんだけど」

 津村が分からない瞳のために説明すると、瞳はうんと頷いた。愛は無言で先を促してくる。

「その人は京の従兄弟でさ」
「え、あいつの?」

 愛がげえっと顔を歪める。瞳は俺と愛を交互に見て、首を傾げた。

「京って?」
「ほら、髪ぼさぼさで見るからに不潔そうな煩い奴いるじゃん」
「ああ…」

 瞳は不快そうに顔を顰める。京が誰か分かったところで、俺はもう一度繰り返す。

「その京の従兄弟が、津村仁っていう人な」
「じゃあその人も不潔で煩いの?」
「まあ煩いと言えば煩いわね。不潔ではないけど」

 ふうん、と瞳が興味なさそうに相槌を打つ。実際興味ないんだろうけど。

「……津村は――優治先輩が嫌い、らしくて」
「ふーん」

 瞳が目を細めてどうでもよさそうに言った。……まあ、そういう反応は想定していた。けど、優治先輩ほんとに、瞳に好かれてないな…。俺のせいでもあるけど、それだけじゃないだろう。もともと瞳は男が嫌いだしな。

「つまり津村があんたに親しげに接してるのは会長を陥れようとしてるからってわけ?」
「……そう、俺が話したいのがそこなんだけど、最初に会った時は俺と優治先輩の関係を知らなかったらしいんだ。でも最近俺と優治先輩の関係を探ってるって聞いて…」
「なるほどね」

 愛が溜息混じりに呟いた。

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