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「高野」
「ん?」
「前に相談に乗ってもらったこと覚えてるか?」
高野は目線を上に遣って、すぐに俺に戻すと、ああ、と頷く。
「大樹が先輩を傷つけたってやつだな」
「それそれ」
「うん、それがどうした?」
「あれ解決したんだ」
首の裏を擦りながら言うと、高野は目を丸くし、にかっと笑う。
「そうなのか、良かったな」
「ああ。あの時はありがとな」
「俺マジで何もしてないんだけど…ま、どういたしまして」
いや、あれで大分心が軽くなったし、決心できたんだ。高野は充分助けてくれた。――と言うのはちょっと気恥ずかしいので、心の中での感謝に留めておく。
……よし、高野に感謝したところでメールをしよう。高野から視線を外し、携帯を取り出した。どきどきしながら開く。
『詳しい話は後で聞く。とりあえずこれから津村に会ったらすぐに逃げろ』
ほっと息を吐く。どうやら怒っているわけではなさそうだ……多分。メールなので何とも言えない。
「大樹」
声をかけられ、顔を上げる。携帯を閉じるとぱちんと音が鳴った。愛と瞳が俺の席に立っていた。
…来たか、と内心溜息を吐く。
「さっきの話」
「ああ…」
「何の話?」
高野が不思議そうに訊いてくる。愛がしっしっと手を動かした。
「高野、あんたには関係ない話。ちょっとどっか行っといて」
「はいはいっと」
高野は肩を竦めて席を立つ。ひらひらと手を振ると窓際の席に座っているクラスメイトの方へ向かって行った。それを見送った愛が瞳を高野の席に座らせる。
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