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 授業中に携帯の震える音が聞こえてきた。あ、と視線を鞄に持っていく。サイレントにするのを忘れていた。この学校は特に携帯の持ち込みなどは禁止していないが、そのかわり授業中はサイレントにしなければならない。鳴っただけでは注意されるだけだろうが、扱っていたら没収だ。放課後に職員室へ取りに行かなければならない。
 先生に気付かれただろうか? 内申点を良くしたいから注意も受けたくないが…。と恐る恐る前を向くが、先生は説明に夢中で聞こえていなかったらしい。ほっと息を吐く。教科書に目を落としてこっちを見ていない隙にさっと鞄に手を突っ込み、携帯を取り出してサイレントに設定する。ちかちかと光ってメールを知らせて来る携帯をじっと見つめるが、ここで読むわけにはいかないと気持ちを抑えて机に入れる。
 ――結局、メールが気になってあまり授業に集中できなかった。











「見つからなくて良かったな」

 先生が教室から出て行った直後、くるりと振り返ってにやりと笑いかけてくる高野。前の席だから聞こえていたんだろう。俺は苦笑して頷く。

「電話とか?」
「いや、メール」

 ふうん、と高野は呟いて、首を傾げる。

「もしかして会長?」

 ぴくりと手が反応する。「ほんとに仲良いな」高野は感心したように声を上げた。

「いや、まあ…」
「いつも思うんだけど会長と何話してるんだ? 想像つかない」
「普通に世間話とか…あ、この前は勉強教えて貰った。成績良かったのも先輩のおかげというか…」
「ええ、あの会長に? いいなあ、コネは作っておくもんだな」

 「コネって」目を細めて溜息を吐く。高野は冗談だとからからと笑って言った。

「……あ」
「ん?」

 そういえば、と高野に相談をしたことを思い出す。あれが解決したってこと、まだ高野に話していなかったな。

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