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 送って、俺は違和感を覚えた。何かを見落としているような…。はっとして、もう一度優治先輩のメールを開く。俺たちのことを探っている。――ということは。先程あった津村は……。津村の様子を頭に浮かべ、血の気が引いた。津村はいつも通りだった。初めて会った時と同じ明るい声で俺に笑いかける。でも、知っていたのだ。俺と優治先輩の関わりを。

「ヒロくん…大丈夫?」
「あ…ああ」

 瞳たちに心配かけまいと、笑みを浮かべて頷いて見せる。すると、瞳の横でじっと俺を睨んでいた愛が俺の頭を殴った。

「いっ…!」
「無理して笑うな。ねえ、大樹。私たちは事情を知ってるんだしさ、話してみない?」

 確かにそうだけど、でも…。俺は迷って黙るが、愛の無言の圧力に適わず、口を開いた。――ところで、先生が教室に入ってくる。愛が舌打ちしたのが聞こえ、口を引き攣らせる。

「またあとで聞くから」

 目を細めて言うと、愛と瞳は自分の席へ戻って行った。同じく戻ってきた高野が二人と俺を見比べて、不思議そうに首を傾げた。

「なに、なんか怒ってた?」
「いや、タイミングが悪かったというか…。別に怒ってるわけじゃないよ、あれは」
「そうなんだ」

 ならいいやと興味を失った高野が前を向く。ならいいやって、怒ってたら興味津々で訊いてくるつもりだったな、こいつ。溜息を吐いて、携帯に視線を落とす。返信はまだ来ない。そろそろ授業が始まるから、もうスマホを扱っていないのかもしれない。俺は一度携帯を握りしめて、鞄に仕舞った。

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