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記憶を辿りながら例の場所へ行ってみたが(数回道を間違えたのは見逃してくれ)、建物にはテンキーロックが掛かっていた。
え、暗証番号とか知らないんですけど。もしかして中に先輩がいるかもしれないとチャイムと思わしきボタンを押してみる。
ピンポーン。
外観には凡そ似つかわしくない軽快な音に拍子抜けする。何でこれをチョイスしたんだろう。いや、チャイムといったら大抵これだけどさ。
……ていうか、出てこない。まだ来ていないのか…? それとも、聞こえていない?
そう思ってもう一度押す。結果は同じだった。今度は三回連続で押す。ピンポーンピンポーンピンポーン。間を挟まず続くそれに苛立って自棄を起こした俺は高橋名人も吃驚な速さでチャイムを押す。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピン――……。
「……何やってんだ、テメェ」
「っ!?」
突然後ろから低い声が聞こえて、俺はびくりと肩を震わせる。慌てて振り返った先には顔を引き攣らせて俺を睨む男前――生徒会長がいた。
「…て」
ピンポーンピンポーンピンポーン――。
空気を読まないチャイムの音が生徒会長の言葉を遮る。軽快な音が俺に死刑宣告をしているように聞こえた。
ピンポーンピンポーンピ――。
「だぁああぁぁ! うっせぇ!」
「ひぃっ! すっ、すみません!」
でもどうしようもないよね! だってもう押しちゃったんだもん!
数秒前の自分を呪っていると、生徒会長の顔がどんどん顰められていく。ついに殺人鬼みたいな顔になった時。
ピンポーンピン、バキッ。
「…え」
俺は体中の血が無くなった様な感覚になった。真っ青のまま生徒会長の強く握り締められているであろう拳を恐る恐る見る。
か、壁に手がめり込んでる……!
チャイムのあった場所はガラガラと音を立てて崩れ、ずっと続いていた音は漸く途切れた。
「よし、入るぞ」
え、軽っ!
「て、て、て、ててて手が…!」
「あ?」
あー、と唸るような声を出した生徒会長は舌打ちをすると、血が出ている手を制服に擦り付けた。
「あ、あの…」
「うぜぇ、喋んな」
足を蹴られ、俺は尻餅を付く。痛みを感じながら呆然とした顔で生徒会長を見上げると、ロックが解除されましたと言う機械音が耳に入る。
そして俺をじろりと睨んだ生徒会長はトロトロすんなと一言告げて中に入ろうとする。
「う、わ、まっ…!」
急いで立ち上がって閉まりそうになるドアを押さえた。このまま閉まってたら恐ろしいことになってたぞ…。また俺様に手間掛けさせるんじゃねえとか言って殴られるかもしれない。
生徒会長は少し驚いたように俺を見てから、直ぐに興味を失ったように視線を外した。
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