津村仁

(side:優治)

 大樹から連絡があったのは、教室で白木と仕事のことを話していた時だった。

「――お」

 俺は思わず声を上げる。丁度大樹に連絡しようとしてスマホを手に取ったところだった。俺の声に反応した白木が顔を上げる。

「高浜くん?」
「ああ、良く分かったな」
「良く分かったなって、きみがそういう顔をするときは高浜くん関係だろ」
「そういう顔、ねえ」

 まあ、緩みまくっているのは自覚がある。

「それで、どうしたの?」
「テストで上位に入ったって、連絡がきてな」
「へえ、高浜くんって頭いいんだ」
「当たり前だろ、あいつは――」
「あ、惚気は良いです」

 白木はにっこりと笑うと手で制した。つまんねえの。でもいいか。白木が大樹の魅力にうっかり気づいてしまったら嫌だしな。仮に好きになったとしても絶対譲る気はねえけど。まずこいつが俺に適うはずがねえし。ふん、と鼻で笑うと白木に鬱陶しそうに俺を見た。

「ああ、そういえば一位おめでとう、さすがだね」
「まあな」
「うわ、そのドヤ顔むかつく」

 言いながら、白木は笑う。そういう白木も、成績は悪くなかったはずだ。一応祝いの言葉でもかけてやろうかと思っていると、白木が、あ、と何かを思い出したように声を上げる。そして周囲を気にしながら顔を近づけて来ると、声を潜めて話しかけて来た。

「知ってる? 津村くんが…来てるってこと」
「……は? 津村が?」
「しかも最近、きみたちのことを嗅ぎ回ってるらしくて…」
「ああ!?」

 がたりと立ち上がる。周囲の奴らが何事かとこっちを窺ってきた。白木は溜息を吐いて、机を指で叩いた。

「落ち着きなって」
「落ち着いていられるか。テメェ何で早く言わなかった!」
「それはごめん、すっかり忘れてたんだ。――とにかく、座って」

 俺はチッと舌打ちして座る。ガタリと大きな音が鳴った。
 
 
 

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