結果発表

 とうとう、やってきてしまった。結果発表の日だ。貼り出されている紙にもし俺の名前がなかったら、という不安で押しつぶされそうになる。周りを見れば、皆どうだろう、と口にしてはいるが、普通に談笑している。そりゃそうだ。一年の初めのテストでこんなに緊張している人なんてあまりいないだろう。

「おはよ。どうしたんだ? 顔凄いことになってるけど」

 高野が登校してきて、俺の顔を見ると目を丸くした。

「まあ、ちょっと…」
「ふーん? あ、分かった。テストの結果が心配なんだろ」

 良く分かったなと思いながら頷く。高野は不思議そうに首を傾げた。

「大樹んとこの親っていい成績じゃないと怒る感じ?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。今回は、えーと…点数が良かったら何か買ってもらうっていう約束で」

 咄嗟にそれらしい嘘を吐くと、高野はなるほど、と納得して頷いた。

「俺もそういう約束しとけばよかったな。最初のテストだから、良い点数取りやすいし」

 悔しそうに言う高野にドンマイ、と笑う。――笑えているかは、正直分からない。
 高野とこんな感じで話していると、廊下から成績上位者が発表されたぞ! という声が聞こえた。ざわりと騒がしくなる教室。俺は高野と顔を見合わせると、立ち上がった。愛が近づいてきて、小声で問いかけて来る。

「…大丈夫?」
「大丈夫じゃない」

 愛にはこの前一緒に帰った時に二十位以内に入らないといけないということを話してある。強張った顔で頷くと、愛が頑張れと応援するように俺の腕を叩いた。しっかりしろ、という意味かもしれない。
 俺はごくりと唾を飲み込んで、教室からそっと出る。

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