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「あんたの気持ちは分かる。だからこれまで強く言ってこなかったけど、大樹が付き合ったって言うなら話は別。瞳、――あんたと大樹が付き合うことはないよ」

 愛の言葉は瞳の胸に突き刺さったようだ。愛がきっぱり言うからかもしれない。瞳がぽろぽろと涙を零して、ぎゅっと口を噛み締める。

「ひと…」
「大樹、あんたは何も言わないで」
「でも」
「あんたが甘やかし続けた結果がこれでしょ。同じこと繰り返すつもりか!」
「は、はい」

 ぎろりと横目で睨まれ、俺は背筋を伸ばしながら返事をする。しかし、気になる。俺は泣いている瞳と愛を交互に見遣った。すると愛は溜息を吐いて俺の腕を叩く。

「大樹は先に帰って」
「……分かった」
「随分あっさり引きさがるのね」
「ああ、いや…この後約束があって」
「なるほどね」

 愛は納得したように頷いた。瞳はじっとこっちを見つめる。行かないで、と訴えかけて来るのを見なかったことにして、じゃあ、と口にして背を向ける。

「大樹」
「…ん?」

 肩越しに振り返る。愛はにっこりと笑って言った。

「会長に宜しくね」

 ……え?
 俺は目を見開いて今度は体ごと振り返った。愛はもう俺を見ていなくて、瞳と共に瞳の家に入っているところだった。

「……え?」

 会長って、何で…。まさか、付き合っている相手が優治先輩だって、知っている…? 

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