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「実は…その、真由ちゃんに、聞きまして」
「なるほどな。しかし、あいつが素直に教えたとなると、マジで認める気になったか」
「え?」

 何の話だ?

「いや、こっちの話」
「はあ…」
「まあ、知ってるなら話は早い。俺様はお前との仲を認めてもらうために、家のことを色々やってきた。今まで休んでたのはそのためだ。で、俺様の本気はまあ伝わったということで、今度はお前の本気が見たいと言い出してきた」

 ……なるほど。まあ、そりゃそうだろう。俺の性別が女で、優治先輩の家が一般家庭だったら当人同士が良いなら、ということで済まされるんだろうけど。そんなにホイホイ認めるわけがないよな。俺は了解の意味を込めて力強く頷いた。

「優治先輩、俺頑張ります」
「――大樹」

 再びぎゅっと抱き締められる。俺は驚いてぱちぱちと目を瞬いた。力を込めてくる先輩の腕。俺はそっと優治先輩の背中に手を回した。

「お前ならやれると信じてる」
「…はい」

 嬉しくて笑う。胸が温かい。優治先輩が頭を撫でて俺を放す。

「あー、で、大樹さえ良ければ、一緒に勉強しねえか。分かんねえとこ教える」
「え? いいんですか?」
「おう」
「だって、先輩も自分の勉強が…」

 自分の所為で優治先輩が成績を落としてしまったらそれこそ評価が下がってしまうのではないだろうか。せめて学年が同じなら…と思うけど今そんなこと考えても仕方ない。

「いいんだよ。……ま、お前が気にするっつーなら、分からねえとこだけでも訊いてくれりゃいい。俺様も自分の範囲やっとくから」
「それなら…」

 そんなに時間もかからないし、有難い。俺はお願いしますと頭を下げた。

「おう、任せとけ」

 話に区切りがついたということで、空き教室を出た。休み時間も残り少ない。教室へ帰ろうとすると、優治先輩に引き留められ、送ると言われた。そんなに離れていないし、俺は男だし、今は夜でもないため断ったが、どこで誰が絡んでくるか分からないと言われ、京と津村を思い出した俺は、もう一度お願いしますと口にした。

 

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