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 ……。しーん、という効果音が聞こえてきそうなくらい静かだ。…え、もしかしてなんか不味った? さあっと血の気が引いて行く。恐る恐る優治先輩の顔を窺った。

「……マジ?」

 優治先輩がぽつりと零す。俺は目を見開いて先輩を凝視した。顔が真っ赤に染まっている。その熱が俺の顔に伝染したように、かかか、と顔が熱くなる。俺の顔も今リンゴのように真っ赤だろう。

「……い、いや、まあ、知ってたけど。…言われると、こう、嬉しいもんだな」
「エッ?」

 ドキドキと鳴る心臓が違う意味で鳴った。今聞き捨てならないこと聞こえたんだけど。

「……知ってたって」
「あー、いや、知ってた、つうか。告白した時のお前の反応とか見て、好きなのかなって」

 おっ、俺そんなに分かりやすいのか!? 郁人にもバレてたし、そういえば瞳にも…とショックを受けた。

「あの、断った理由なんですけど」
「…ああ、想像はついてる。家柄のこととか…気にしてるんだろ」

 優治先輩は苦笑して俺の頭をくしゃりと撫でた。俺は、はい、と短く返事をする。

「あー、それでな。その話なんだけど」
「…? はい」

 言いにくそうに首の裏を掻いて、言葉を探すように視線を漂わせる。俺は首を傾げて、言葉を待った。

「もうすぐテストだろ?」
「はい」
「それで…上位二十人は廊下に名前が貼り出される」

 優治先輩の言わんとしていることが分かった。俺はもう一度、はい、と相槌を打つ。

「つまりそのー…、二十位以内に入って欲しい」
「優治先輩のお父さんから認めてもらうため…ですか?」

 優治先輩は目を見開いた。何故知っているのか、という顔だった。


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